友達にあった話。
Aが友人と2人で、出るって有名なトンネルまでドライブに行くことになった。運転するのは友人で、もちろん夜中。
くねくねと曲がる山道の途中にそのトンネルはあった。適当にトンネル周りと中を走り回ったが、うす暗くて気味が悪い位で特になにも無し。
拍子抜けした2人は帰ろうと峠の道を走っていた。車のステレオから有線の音楽が流れ、夜中ということもあって2人ともテンションが上がっていた。
しばらく走っていると、これまでしゃべっていた運転席の友人がふいに黙り込んだ。Aがどうしたという目で見ると、友人がボソっと「…なにか聞こえる」と言う。
え?とAが耳を凝らす、確かに有線に混じってなにか音が聞こえる。小さいが、なにかの曲…オルゴールの音だ。
有線ではないかと疑ったが違う。誰も乗っていない筈の後部座席、2人の真後ろから音が鳴っている。
振り向いてはいけないとAは直感した。友人は恐怖で顔面蒼白になりながらも、じっと前を向いている。
最初はかすかだった音は段々とはっきり聞こえるようになってきた。震えながらも必死で前を向いていたAの視界の端に、なにかが映った。
助手席と運転席の間、丁度シフトレバーのところに、後部座席から身を乗りだすようにして子供の頭が出ている。思わず叫びそうになるのを堪えると、触っていない筈のウインカーが急に動き始めた。
そのカチカチという音に合わせるように、子供の頭が出たり入ったりを繰り返す。2人はそれを視界の端に捉えながらも必死に前を向き、カーブの続く道をひたすらスピードを上げて走り続けた。
峠を越えると音は消え、子供の姿もいなくなっていた。