このたび引っ越した。
夜勤が増え、職場にいる時間が増えたため部屋代に金かけるのがばかばかしくなったのだ。少々古びたアパート。
だが、当然ながら家賃は安いし掛け持ちで持ってるいくつかの現場にも行きやすい立地条件だった。昼夜が逆転した生活のため、隣近所との付き合いはあまりない。
さて、休日でも生活が夜型なため、昼間に寝てて夜遅くまで起きている。だからこそ騒音には人一倍気を使わねばならない。
そんなある休日の夜、上の部屋から延々と足音が聞こえてきた。音源は特定のパターンで行き来を繰り返す、一体何なのだろう。
またある夜は、「ひぎゃわー!」と、子供の声で悲鳴が聞こえた。虐待か?と思ったが、親が折檻しているような声も暴行の音も聞こえない。
幸い、それらの騒音は俺が起きてる時間なためさほど問題はならなかったが、子供がいる家庭の騒音として片付けるにはあまりにも異質なものだった。上の部屋は一体どうなっているのか、他の住人と話す機会をなかなか得られず、たまに会ってもあの部屋については言葉を濁した。
これがいわゆる、いわくつきの部屋なのだろうか。そんなある日、隣の部屋から荷物が運び出されていた。
その部屋の住人が居眠り運転による交通事故で亡くなったという。本当にいわくつきか?あの騒音はポルターガイストとか言う奴なんだろうか。
考え出すとあれこれ想像を膨らませてしまい、上の部屋がどうなってるのかますます聞きづらくなってしまった。今も、「ない……ない……」という呟き声と共に、何かを探して部屋を引っ掻き回す音が延々と聞こえている。
なにを探しているのだろう?普通ならいい加減諦めるなり、本人が飽きるなり、親が叱るなりしそうなものだ。つまり、上の部屋にいるのは普通でない何かということになる。
確かめるのが怖い……