中学の同級生が早死にしてたことを、十年以上経って、唐突に知らされる。
何か納得できないっていうか・・・・あんなに元気だったあいつが、どうして逝ったんだろう?ついつい考えてしまう。これも運命か、と納得するほど、人間ができていないのか。
おまえは平気なのか?不安とか感じないのか?酒の席で、つい元気な友人にからんだりすると、そんなことはないよ。と神妙な顔つきになっていた。
あいつが死んだのは、実は理由があるんだ。気が滅入るから、あんまり話したくはないんだけど・・・ただの噂話じゃすまされない現実が、こんな物語を作りあげたのかもしれない。
さて、誰かが俺を登場人物にする話を始める前に、先に語ってしまおうか。まずは、奇妙な現実から・・・去年、同級生の結婚式に招待された時のこと。
式の当日、披露宴のテーブルに、中学の知り合いはいなかった。友人のSとは高校は違っても、ずっと友達付き合いをしていた。
こちらが進学で県外に出てからも、帰省するたびに会って遊んだ。だいたいTやAも一緒だった。
だから結婚式に、TやAが出席しないと聞き、Sに問いかけた。「Aには連絡が取れない。
Tは今病気で入院してる」そういえば、四人で最後に会ったのは三年前の正月だったか。そんなことを思い出しながら、Sの高校時代の友人らの談笑に、適当に付き合っていた。
しまいには手酌でビールを飲み続け、ふらついてトイレへ。エレベーターホールのソファで一服しながら、酔いを醒ましていると、「あれ、中学の時一緒だったよね」赤ら顔の同じ年くらいの男が話しかけてきた。
「あっ、僕はW。今日は新婦の従兄弟で来てる」そういえば、新婦を見るのは今日が初めてだしなあ、と思いつつ、男の顔にも見覚えはない。
そのWという男は、中学の同級生の名前を何人かあげた。「じゃあNのこと知ってる?」一瞬、酔いが醒めた。
「ああ、何か三年前に亡くなったらしいね」Wは驚いたような顔をして、こちらを見つめた。「いやっ、去年だよ、去年。
俺葬式に行ったから」人違いかなと思いつつ確かめると、そうじゃないようだ。Nの名前やサッカー部だったことも言い当てた。
「そう心臓麻痺」「朝になったら、もう心臓が止まってたらしい」Wはそれだけ言うと、ふっと立ち上がってトイレへ。その後十分以上経っても、Wは戻ってこなかったので、俺は宴会場に戻った。
結婚式が終わって一週間ほどした頃、Sから電話があった。こちらが慌しく帰ったせいで、ゆっくり会う暇もなかったな、などと言いながら、気になっていたWの話をした。
「確か三年前だったよな、おまえから聞いたんだ。Nが死んだこと」「それとWだけど、披露宴の座席表に名前がないんだよ」しゃべっている最中に、電話が切れた。
その日以来、Sの電話がつながらなくなった。どうやら、着信拒否されてるようだ。
たまに会う友達とはいえ、十年来の付き合いだ。俺は考えた末、Tの携帯に電話した。
Sが言っていた通り、Tは入院中だった。疲労症候群?みたいな症状で、塞ぎこんでいるようだった。
さすがに病気のTにNの話題は振らなかったが、Wのことを話した。「・・・W?あいつは一昨年死んだよ。
海で溺れたそうだ」「おまえが会ったのは、Wの幽霊だよ」こちらが唖然としていると、Tはぽつりと言った。「Aも親が失踪届け出したみたいだな・・・・・たぶん死んでるんじゃないか」ここから先は夢の話だ。
正確に言うと、Aが夢の中で俺に語った話だ。N、W、A、S、Tは中二の時同じクラスだった。
(ちなみにA、S、Tは中三の時に俺と同じクラスだった)三学期の春休み前、五人は深夜徘徊だかで補導され、放課後職員室に呼ばれた。一人一人厳重注意され、父兄呼び出しの処分を通告された。
むしゃくしゃした気分のまま教室に戻ると、三人の女子生徒が机を囲み、額を突き合わせ、何かやっていた。こっくりさん、だったらしい。
Nはその三人を驚かせてやろうと言い出し、そりゃ面白そうだ、と四人も同意した。教室の前後の扉に身を潜め、タイミングを見計らって中に突入すると五人の喚声に驚いて、二人の女子は悲鳴を上げた。
パニックで泣き出した二人を無視して、ある女子生徒が仁王立ちになり、彼らを物凄い形相で睨んだそうだ。そして野太い声で、「おまえら絶対に許さん」と唸ったという。
その鬼気迫る様子に気おされ、みんな堪らず逃げ出したそうだ。そして、翌日の終業式。
体育館で全校集会を終えて教室に戻ると、黒板に大きく名前が書かれていた。彼ら五人の名前だった。
ここまでが夢の中で見聞きした話だ。俺はこの夢が事実かどうか確認する為、再びTに電話した。
「Sに聞いたのか?」「ああ」さすがに夢でAに聞いたとは言えない。「俺らのこと怒鳴りつけたの、誰だか分かったのかな?」「え?どういうこと?」俺の問いかけに、Tはため息をついた。
「泣き出したのは○○と××なんだ」「でもあいつら、俺らを怒鳴った女のこと全然覚えてないんだ」「黒板に俺らの名前を書いたのも、誰だか分からない」この会話を最後に、TとSとは連絡を取っていない。なぜなら、また夢を見たからだ。
でも、どんな夢だったかは書く気はない。