ある寮での出来事。
同室の先輩と後輩が夜中にトイレに行った。
後輩は寮に入ったばかりなので
薄暗い廊下の向うにあるトイレは苦手だった。
先輩がトイレに行くと言うのを待っていたのだ。
トイレは個室が5つ、
総て空いていた。
どうやら自分たちだけのようだ。
先輩の隣の個室に入り用を足していた。
水の流れる音がして
先輩がドアを開ける音がして
一人になってしまう恐怖から
「先輩、お願い待っていてください」
と声をかけた。
先輩は
「ええ~」
と一言。
「お願いします」
と何度も言った。
先輩が待っていると
思い早く終わらせなければと思ったが中々出ない。
緊張からか腸が拒否をしているようだ
「すみません、もう少しなんで」
と声をかけると
「良いよ~、ゆっくりで」
と声が帰って来た。
ホッとして緊張が緩んだせいか
他愛のないおしゃべりを仕始めた。
先輩は
「そうかぁ~」
とそのたびに相槌をうってくれた。
水を流して個室を出ると誰もいない。
急いで手を洗い
廊下に飛び出すと先輩は
自室の前で待っていてくれた。
自室からはトイレの入り口が丸見えになっている。
「先輩最後まで待っていてくださいよ~」
と声をかけたら
「えっ、ずっとここで待っていたけど?」
と、先輩は自分が用を足し終えると
すぐにトイレを出て自室に向かった。
でも後輩が気になり
トイレが見える部屋の前で待っていた。
「だって、先輩先に出て待っていてくれたんじゃないですか」
「ううん、すぐに出たよ」
「ずっと喋っていたじゃないですか」
「……、とにかく部屋に入ろう」
先に出た先輩は誰もトイレに入って来なかった事を告げ、
あのトイレは時々そういう事があるらしい事を教えてくれた。