私は霊的現象は信じていませんでした。
私の周りに居る「自称霊が見える」人達の話も全く信じていませんでした。ですが、今では信じています。
信じざるを得ないと云うのでしょうか。丁度1年前の話になります。
私とH(男)とK(男)は幼馴染。小さい頃からいつも一緒でした。
その日も3人でN県にある、廃墟と化した病院に肝試しに行こうとなったのです。時刻1時。
真っ暗で周りは何も見えない。たった一つの懐中電灯を頼りに歩きました。
夜中の病院って本当に怖い。霊的に、とかじゃなくて理屈無しに怖い。
雰囲気だけで怖い。余りの怖さに失禁しそうになった私を見て、やはり肝試しは明日にしようとなりました。
(きっとHもKも怖かったんでしょうね。)翌日昼ごろ。
雨が降っていましたが、明るく、これなら行けそうと思っていました。病院内に入ると、イヤ~な雰囲気。
匂い。暑いはずのに空気が生ぬるい。
寒気がする。私達は適当に病院の格部屋を廻りましたが、少し飽きてきました。
幽霊なんて居る筈もなく、私は内心ホッと安心していたのです。そろそろ帰ろう、HだったかKだったかがそう言いました。
するとその時、突然「カーンカーンカーン・・・」階段をハイヒール等で歩く足音が聞こえてきたのです。もうそれだけで大パニック。
HもKも、勿論私も悲鳴もあげられず、その場で立ちすくむだけ。普通こんな状況でしたら必死に走って逃げますよね。
でもその時の恐怖感と云えば、足がすくみ、身動き一つ出来ない。だんだん足音が近くなってくるのが手に取る様にわかる。
その時でした。Hが大声で「走れえぇぇぇぇっぇぇぇぇぇーーーーーーー」と言ったんです。
私とKはハッとし、3人でダッシュで病院から逃げ出しました。漸く車まで戻ると急いで車を出し、無事に近くの食事処の様な場所まで着いたのです。
車の中でも、そこに着いて数分の間も、私達は無言のままでした。Hは汗をビッショリ掻いていました。
Kは泣いていました。私はただただ呆然としていました。
「俺たちの他に肝試しをしていた奴が居たんだ。きっとそうだよ。
」Hは自分にそう言い聞かせるように言いました。私とKは「ウン、ウン、そうだよな、それしかないよな」と返しました。
そうして私達は納得し、帰ったのです。次の日、Kから電話がありました。
「お前見たか?」そう言ってきたのです。「何を?」そう返すしかないじゃないですか。
でも本当はわかってたんです。Kは「何か」を見た。
いつも強気のKが霊を見て泣く?私より怖がる?おかしい。Kは続けてこう言いました。
「俺、見たんだ。病院で。
足音が聞こえて・・・逃げ出しただろ?その時、俺、チラッと後ろを振り返っちまったんだ。」「・・・・・・・・・・・・・・・・何を見たの?・・・・」「女だった。
俺たちが逃げると共に女も走ってこっちにきたんだ。真っ黒で長い髪をバサバサさせて、すげえ勢いでこっちに向かって走ってきたんだ。
ものすごい形相だった。本当に殺されるかと思った。
だけど、・・・笑ってたんだ」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」現在、HもKも私も今までと変わりなく仲が良いです。でもあのときのことは誰一人話さない。
タブーになっているんです。Kは普段嘘なんて絶対吐くような人ではないし、電話の内容も本当だと思います。