これは俺が先生のグループに入って体験した事で、一番厄介な件。
そして俺が霊感モドキを手に入れた時の事。ある日、トモヤ(俺が先生と知り合うきっかけになった奴)が、集い場(心霊スポットの事。
俺たちはこう言ってた)を見付けてきた。夏だし、皆で行ってみようかーって話になって、ワゴン持ってる先輩、ハタさんに連絡してやっぱりいつものメンバーで行くことになった。
夜になっても暑くて、俺はトップスはタンクトップだけで行くことにしたんだけど、後々後悔することになる。夜中になり、十二時を過ぎた頃にハタさんの車が来た。
メンバーは先生、俺、ハタさん、トモヤ、ユウ(女の先輩)さんのいつもの五人。今回の集い場は山の中にある廃ホテル。
ちょっと前までは結構有名だったらしい。それを聞いて先生は、「怖そうだね~」っていつも通りふにゃふにゃ~っと笑ってた。
そしてホテルに付いた。結構大きめ?の洋館みたいな感じ。
それを見てハタさんが先生に聞いた。「居る?」「居るね~。
結構凄いよ。【隠れる人】が窓に何人か。
あ、【潜む人】が居るかもしれないから変なの触らないでね~」と言ってまたふにゃふにゃ~。でも先生の口ぶりからすると、それなりヤバイっぽい。
少し緊張しながら中に入っていった。三階建てで、横に広い変なホテルだった。
少し探し回ったけど、何も無い。ハタさんが何もねーじゃんかーなんて言ってトモヤを懐中電灯でこづいたりしてた。
一階、二階を歩き終わって、三階歩いてる途中、先生が言った。「この部屋……」ホテルの一部屋。
先生がその部屋の扉を見て言った。「何か居るみたいだけどどうする~?」入る事にした。
何分か待ったけど、何も起きない。皆で休む事にした。
ハタさんは煙草を吸って、先生は煙い~ってふにゃふにゃして、トモヤとユウさんが何かを喋ってる。俺は窓から外を見ていた。
そしたら、肩が急に重くなった。【掴まれ】た!そう感じた途端に、部屋の中からがりがりがりがりと音が響き出した。
がりがりがりがりがりがりがりがり……がり音が止む。次の瞬間。
腕、右拳がはねあがった。窓ガラスを破った。
意識に霧がかかる。音は聞こえない。
次には肘がはねあがる。割れた窓ガラスの枠に残ったガラスにぶち当たり、砕いた。
意識はまだ鈍い。立っていれない。
倒れこむ。途端、感覚が戻ってきた。
皆がよって来る。どうした!おい!大丈夫!?声がかけられて右腕がはねあがった。
右手と肘か熱い。血が跳ねた。
右腕はびちびち動き、何かを掴もうとして、手を広げ、閉じて指がぐにゃぐにゃと動く。ハタさんが右腕を押さえようとした。
けど無駄だった。右腕はハタさんをはねのけた。
瞬間、ごきりと体の中で音がした。「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」絶叫した。
親指がどうにかなった。それでも指はうしゃうしゃとうごめく。
もう駄目だ。痛すぎて意識が飛びそうになった瞬間、先生が走ってきた。
先生は小さい刀、ナイフくらいの刀を右手に持ち、俺の右腕を斬りつけた。瞬間、右腕が動きを停めた。
そして意識が飛んだ。起きたのは、椅子の上だった。
ぎっちりギブスで右腕を固められて、長椅子の上に寝そべっていた。先生に膝枕されて。
「あ、大丈夫~?」先生はふにゃふにゃ笑った。それを見て、生きてるんだな、と実感した。
「俺、どうなったんすか?」「右手の親指を脱臼、手の甲と肘をばっさり斬って、掌も少し切ったみたい。合計18針縫ったらしいよ~」「……俺、どうしたんすか?」「【掴む人】に【掴まれ】て右腕を【握られた】んだよ」「……【掴む人】はどうしたんすか?」「斬ったよ。
バサ~って」その後、皆が来て心配してくれた。その後でハタさんに家に送って貰い、眠りについた。
一週間、ずっと家に居た。先生やトモヤ、ユウさんハタさんが交代で泊まりに来て、世話をしてくれた。
その時、先生に色々具体的に聞いた。右腕がなくて、指を口にくわえた【掴む人】だったらしい。
その【掴む人】は、左腕を俺の右手に入れて(その左腕が俺の右腕の中にずぶずぶ入ってたらしい)俺の右腕を【握った】。それを見て、落とせる人じゃないと感じた先生は【意付け】された小刀(刃は削ってあって、実際は斬れないヤツ)で【掴む人】を斬り殺した。
(意付けとかの言葉は、後で説明したい)俺は完治するまで2ヶ月の怪我(中指の健が切れてた)をして、さらに三ヶ月のリハビリをする事になった。この件があってから、何かヤバイものが近くに居ると、右腕がビクッとなるようになった。
怪我をして、霊感モドキを手に入れたワケです。得したんだか損したんだか。