俺は晴れて大学生になった。
今まで実家暮らしだったのが一人暮らしへ。最初は不安だったけど、少しずつ慣れていった。
そんなある日、一通のメールが携帯へ届いた。『たかし(仮名)君はどんなゲームするの?』相手はサークル勧誘の際に知り合った3年の先輩(男)。
交流会で話が弾んで意気投合したことから、メルアド交換へと至った。実際に会ったのは交流会一回きりだったが、他愛も無いゲームの話から俺が少し興味あったDTMの話まで、暇つぶし程度に軽く返信をしていた。
交流会で一回会っただけの、メールだけの繋がり…でもそれは次第におかしな方向へと転がり始めた。ある日の着信。
『たかし君の顔写真、送ってくれませんか?』突然届いたそのメール。何の事か分からず普通に「え、何でですか?」と返信した。
『どんな顔してたかな~と思って。』と答えが返って来たが、あまりにも気持ち悪いのでそのまま無視していた。
すると、『今アパートの前に来ました。』は?と思いキッチンの小窓からそっと覗くと、確かにあの先輩がそこに立っている!!何で家を知ってるんだ!?頭の中は完全にパニくっていたが、交流会の時『新歓の連絡先を』と住所等を書かされていたのを思い出した。
「…なんで書いちゃったんだろうなぁ」と思いつつ後悔してももう遅い。結局その日はカーテンを閉め切り、部屋で居留守を使っていた。
途中ニ、三度チャイムが鳴ったがもちろん出なかった。何時間かした後外を確認すると、その先輩はもう居なかった。
それからも幾度と無く送られてくる先輩からのメール。『たかし君は普段何をしていますか?』『今度たかし君の家へ遊びに行ってもいいですか?』『たかし君、今から会えませんか?』俺は逃げるかの様に8月に携帯を変え、アドレスも番号も変わった。
おかげで、先輩からのメールはぱったりと来なくなった。それから1年が過ぎ、あの時3年だった先輩も卒業を迎えるらしい事を知った。
メールが来なくなったものの、どこかで不安がっていた俺はようやく解放された様な気がした。しかし、卒業式まで一週間という所で一通のメールが舞い込んだ。
…差出人は、あの先輩からだった。『たかし君、何度も気持ちの悪いメールを送ってゴメンなさい。
あんなメールを送っていたのには理由があります。それは、たかし君が死んだ友人と似ていたからです。
本当にゴメンなさい。』淡々と綴られた事実。
感動?そんなモノ無い。何であいつが俺のアドレスを?そして、死んだ友人と俺を重ねていたという気味の悪さだけが、後に残った・・・。