まだ俺が高校生だった頃
部活合宿の帰りで駅に向かい、
電車を待っていたんだが
なぜか時間を大幅にずれ越しても電車が来ない
何事か?と思っていると
「ただ今人身事故が発生した為、
電車がストップしております」
の放送が
その後の放送では運行再開まで
最低でも30分は掛かる、との事だったが
駅周辺に暇を潰せそうな所も無く、
仕方なく俺と部活仲間は駅構内で運行再開を待つ事にした
それから何分か経った時、
皆喉が乾いたんで
俺が代表で自販機に飲み物を買いに行く事に
そして自販機のある入り口付近に行った時
駅の入り口から凄く鮮やかな紫の着物を着た女性が
多少息を切らせて入ってきた
着物とは珍しい、と思いつつも
あまり視線を向けるのも失礼と思って目を逸らし
ジュースを買っているとまた繰り返しの
「ただ今人身事故が~」
のアナウンスが
いいかげん何度も流れていたアナウンスだったので
聞き流していたんだが
そのアナウンスに紛れて聞きなれない、
というかその場にあからさまにそぐわない言葉が耳に入った
「ハハ、上手くいった」
その声が女性の物だった事もあり、
つい先ほどの着物の女性に視線を向けると
その女性は着物の袖口で口を覆う様にしながら、
駅構内から出ていく所だった
俺は情けない事に呆気に取られるばかりで、
女性を追う事もその言葉について問う事も出来なかった
あの時の「上手くいった」がなにを意味するかは正確には判らないが、
あの侮蔑交じりの声だけは今でも耳に残ってる