鳥取にある峠にはいつ設置されたかもわからないほど古いカーブミラーがある。
今でこそ道路は見通しよく改装されたが、昔は見通しの悪い曲がり道だったらしくよく事故が起きていたようだ。ところが最近になっても事故が減らないので県の職員であった私のおじが調べに向うことになった。
調査に行く日、予定では午後4時ころに向かうつもりだったが、他の仕事が溜まっていて結局現場に着いたのは午後9時頃だった。おじはひとまずその道を車で走ってみた。
見通しの良いカーブを曲がるのにカーブミラーを見る必要はないと思ったが、そのときはふとミラーを見てしまったのだという。するとミラーにはぼんやりと女性の顔が見えたという。
おじは少し怖くなって意味も無く目をバックミラーにやった。ミラーの中には、今度はくっきりと、頭皮のはがれた女性の顔が映っていた。
しかもその目はギョロリとむかれた目で、おじの目を完全にとらえていた。おじは震え上がり、とっさに目を閉じた。
運転中に目を閉じる行為の方が、その女性を見続けるより安全だと悟ったという。しかし、開いた目の前には、その女性がおじにかぶさるような体勢でまだおじの目を見続けていたという。
「おおぉぉ」という嗚咽を漏らしながら。おじはそこからの事を覚えてないようだが、なんとか無事に帰ってきた。
だが、この話を私に話した数日後、突然行方不明となり行方を捜す手がかりは今もない。ただ、あのカーブミラーの近くでおじの履いていた靴が見つかったことを除いては。