小学生のころの話です。
ちょうど梅雨時で、玄関脇にナメクジが大量発生していました。学校でナメクジはその80%が水分である、と教わった私は、塩に変わるナメクジ除去方を考えていました。
塩をかけただけでは、縮んだナメクジはまた水分を吸収して復活してしまうからです。そこで私が考えたのは、「火であぶる」というものでした。
これは思った以上に効果があり、火にあぶられたナメクジ達はまたたく間に白く変色していきました。白くなったものは、水につけてもまはやピクリともせず、嬉しくなった私はその方法で、その日だけで10匹以上のナメクジの駆除に成功しました。
あぶられたナメクジはみな一様に、体をくねらせ苦しみもだえているようでした。今思うと、よくあんな残酷な事をしたものです。
ところがその日から、我が家で買っていた猫の姿が見えなくなったのです。元々野性的な性格だったので、またどこかに遊びに行ってるのだろうと思ってましたが三日後に帰ってきたとき、家族と仰天しました。
猫の右手首にナメクジがミッチリへばりつき、うごめいていたからです。その右手首は膿んでいるようで、猫もビッコをひくように歩いて帰ってきました。
慌ててナメクジを剥がしましたが、取っても取っても肉の奥から沸いてくる感じで、全部取りきった時は大小会わせて30匹以上のナメクジが庭に山になり、その処置にホトホト困りました(親が市販の駆除剤を使い駆除していました)結局、獣医さんに運びましたが猫の右手首は切断せざるを得なくなり、その手術で弱ってしまった猫はそのまま病院で死んでしまいました(元々高齢な猫だったので、手術に耐えられないかも、と言われていました)。母に私がナメクジを火であぶっていた事を話すと「ひょっとしたら生存本能で、死を予感したナメクジ達が必死で猫に取り付いたのかもしれない」等と言われとても悲しかったのを覚えています。
自分のせいで愛しの猫が死んでしまったのだと思い知りました。また、この事件(猫の死)の後もしばらくの間、いつのまにか家の廊下やお風呂や洗面台にナメクジがへばりついていた事がありました。
潔癖症な父が設計した我が家はゴキブリや害虫などが侵入できない造りになっているので、両親ともにとても不思議がり、気味悪がっていました。私はと言えば、もう生きた心地がしませんでした。
というのも、私の体のどこかにナメクジが寄生しているのではないかと思ったからです。右手にナメクジが寄生されていた猫も、ナメクジを駆除しようとしても全く痛そうな素振りをしなかったので、ひょっとしたらナメクジの寄生は痛みや違和感を伴わないのかもしれない、と思いました。
そこで毎日お風呂に入るたび、濃い塩水を作って浴び、体の隅々まで異変は無いか観察していました。眠っている時に襲われたら、と思うと、夜も眠れない日々が続きました。
しかし結局何事も無く私は今も無事です。ただ、毎年この時期になるとナメクジを見つけるたびに恐怖してしまうのです。
また、猫の名前は伏せてあります。