バイク乗りの友人の話その友人を仮にA(男)としよう。
Aはどっちかというとリーダー的存在だった。みんなを引っ張っていくというより飄々とした感じの性格で、自然とまわりに人が集まるような感じの奴だった。
そんなAのバイク仲間の一人に、Bという男がいた。Bはちょっとマイペースな性格で、ツーリングでも時々自分勝手な走りをしてAやみんなを困らせるような人だったらしい。
しかしどっちかというと気の弱い方で、根は悪い奴ではないので、仲間としてそれなりに付き合っていたという。A曰く、「クラスに一人くらいはいるじゃん、悪気はないけど自分で気付いてないっていうか、天然っていうか・・・それほど仲いいってわけでもないけど悪いってわけでもない、そんな友人の一人」だそうだ。
ある日、いつものように仲間とツーリングして、その帰りのこと。すっかり日は暮れていた。
途中で自由解散となって、Aは帰りの方向が同じBと一緒に走っていた。しばらくすると、前を走ってたBがいきなりウインカーをだして、一軒のファミレスに入っていった。
Aは(・・・またか、しかたねーなー)と思いつつ、Bについていった。Bは、トイレから出てくると、「ごめん、なんか喉乾かねえ?」と笑いながら席に座った。
Aは(お前トイレいってんじゃん)と苦笑しつつ、店員を呼んだ。えらく無表情な店員がやってきて、「いらっしゃいませ」と、テーブルの上の、オススメが描いてある紙の立て札を見せつける。
それにはパッションフルーツドリンクが描いてあった。Aはめんどくさかったので、「ああ、じゃあこれ一つ」と言うと、Bも「あ、じゃあおれもそれ」と続ける。
「パッションフルーツドリンクお二つですね」と店員は冷ややかに答える。Aは、なぜかやけに眠気を覚えていた。
Bは、そんなAにお構いなしに、たわいもないことを話しかけていた。いつもはそれほどおしゃべりな方ではないそのBの態度が少し怪訝に思えてきた。
いつの間にか、目の前には、真っ赤なパッションフルーツドリンクが来ていた。少しうとうとしながら、Bの話に適当に相槌をうってると、「おいA!ちゃんと聞いてるのか?」Bの思いがけない口調にAは驚いた。
「き、聞いてるよ」いつもの気の弱そうな彼とはうって変わった厳しい口調で続ける。「Aはいつもそうだ。
おれのいうこと全然聞いちゃいない。おれのことなめてるだろ?」「そ、そんなことねえよ・・・」なぜか眠気はやまない。
「嘘付け!お前らいつもおれの陰口を言ってるんだろう?!」Bはどんっ!とテーブルを叩いた。その反動でドリンクがぶちまけてしまう。
ジュースが服にかかって真っ赤に染まる。が、冷たくない。
むしろぬるいくらい。Aはジュースを拭こうとするも、あまりにもの眠気で体が思うように動かない。
見ると、Bの服も真っ赤に染まってしまっている。Aは、必死に眠気に抗いながら答える。
「陰口なんか言ってねえよ!仲間じゃねえか!」事実、Aは性格上そういう陰口とか大嫌いだった。「ほんとか?仲間なんだな?」「あたり前だ!今日も一緒に走っただろ?」「じゃあ、帰りも一緒に走ってくれるんだな?」その時Aはなぜか、(やばい!)と思った。
次の瞬間、Aの携帯が鳴った。さっき別れた別の仲間からだった。
眠気の中、必死に携帯に出ようとする。「・・・走ってくれるんだろ?」Bは、目をかっと見開き、、すさまじい形相でAを見据えながら聞く。
「お前もこいつ(携帯の相手)も仲間だ!」Aは思わず叫ぶ。やっとの思いで携帯の通話ボタンを押す。
携帯からは、何故か、両親が自分の名前を呼んでいる声が聞こえた・・・・・・Aは、病室で目覚めた。ツーリングの帰り、AとBのバイクが接触し、転倒したらしい。
下りの坂道で、二人からまって道路から落ちるような形だったそうだ。二人とも生死の境をさまよう程の大怪我を負い、Aは奇跡的に生還し、Bは、Aが目覚める前に息をひきとったという・・・