深夜2時過ぎ、寝ている俺の耳に「パチパチ」とい音が聞こえてきた。
「ん?霰か雹でも降ってるのかな・・・」と無視して寝てた。しかし、その音は窓の外じゃなく、下の方からするような???パチっと目が覚めると周りが煙で霞んでる。
「か、火事!???」俺の寝ていた下の店舗から出火したようで、もう畳の隙間から煙が立ち上っていた。隣の部屋に寝ていた祖母、別な部屋に寝ていた叔母を叩き起こして傍にあった電話で消防署に電話した。
その間に祖母と叔母は階下へ様子を見に降りた。電話したのは良いが、厨房の俺は気が動転して口を塞いで身を低くすることを忘れていたせいで煙を吸い込みすぎた。
「落ち着いて、落ち着いて下さい」というセンターの担当官の声が段々遠くなってくる。本能的に「このままじゃ死ぬ」と思い、フラフラの足取りで物干し台の方角へ。
転がるように表へ出た。そこはオヤジと後妻一家が住む家への渡り廊下も兼ねていた。
何とか這いずってオヤジの家にたどり着き窓ガラスをガンガン叩いた。「火事!火事だぁ!!!」しばらく叩いたが反応無し。
傍にあった物干し竿でガラスをたたき割ろうとした瞬間にようやくオヤジが顔を出した。もう俺が出てきたところから真っ黒な煙が出てきていた。
そして慌てて下におり、正面に回ると・・・呆然と佇む叔母がただ一人。「おばあちゃん・・・おばあちゃんは!!?」俺を見た叔母が「○○!お前どこから降りてきたの!!お前が居ないってお母さん(祖母のこと)は探しにまた戻って・・・」「ええ!?」もう家の窓から炎が吹き出してる。
俺と叔母は祖母を呼び続けたが祖母は還って来なかった。夜が明けて・・・二階に上がる階段付近で焼死体で祖母は見つかった。
。。
あの時俺が一緒に下に降りていたら・・・人生で一度だけやり直しがきくなら迷わずあの瞬間を選ぶ。