ガキの頃、夏の蒸し暑い夜の出来事。
あまりに暑いので家族のものから、アイスを買ってくるよう頼まれた。当時、街灯もまばらな田舎に住んでいた俺は、8時過ぎくらいに家を出て、片道10分くらいの一本道を通って、町の雑貨屋に行った。
アイスを人数分買って帰り道に差し掛かったとき、何とも嫌な空気を感じた。たいして気にもせず家に向かうと、突然背後から声をかけられた。
20代くらいの若い女性だった。暗がりでよく見えないが、髪が長く綺麗な感じだったのを覚えている。
「この道はどこへ続くのですか?」そんなことを聞かれたと思う。俺は歩きながらその人と話した。
別に怖くもなかったし、子供だったのかたいした疑問や疑いもなかった。しばらくすると、当然家の前に着いたので「ボクんちここなんで」と言って失礼した。
「ただいまー」家に帰ると家族がカンカンに怒っている。「今まで何してたんだ!もう12時過ぎだぞ!」往復30分もかからない道なのに…。
暑い夏の夜、なぜかアイスは溶けてはいなかった。もう30年も前の出来事だ。