学生の時、原付きで新聞配達のバイトをしていた。
いつものルートで新聞を配り、あるマンションに配る番になった。新聞をマンションなどで配る時は、最上階まで行き、降りながら配っていく。
エレベーターが途中で止まっていたので↑ボタンを押して待つ。こういう僅かな待ち時間で少しでも目をつむり睡魔を紛らわす癖がついていた。
すぐにエレベーターが降りて扉が開く音がした。その音に合わせ、目を開け歩きだした。
‥異様な絵が飛び込んできた。人が乗っていた。
深夜3時過ぎに止まっていたエレベーターの中に。付け加えてエレベーターに乗る場合、普通は顔・体の正面を扉に向けるはずなのに、その人は、奥の壁に額を付けていた。
こちらから見ると背中しか見えない。すごく気持ちが悪かった。
‥が乗らないことには配るのに時間がかかるので意を決して乗った。エレベーターが最上階に着くまで、その人を直視できない。
けど視界に入れておかないと恐怖は増す。どうしたら‥と思っていたら、いきなり低音が響いた。
‥寝息だ。こんなところで、器用に寝るなよ。
俺は人間が1番怖いと思う。