数年前、京都から162号線を使って日本海に向かって1人で車を飛ばしていた。
時間は夏の真夜中の2時頃。雨がしとしとと降っている状態。
道路には車が殆ど走っていない状態で、快適に飛ばしていた。人が全然いない山道を走っていく。
左側の空き地に公衆電話のボックスが一つ明かりがついている。電話ボックスの中で何かが動いている。
何か白い布のようなものがひらひらと舞っている感じ。目をじっと凝らしてみると、白いワンピースを着た女性が電話ボックスの中で、くるくると回転している。
「何?」慌てて目をもう一度凝らしてみる。今度はさっきよりもはっきりと、白いワンピースを着た女性が電話ボックス内でくるくると舞っている。
それに下半身も無い。「あっ」と思っている間に、車はその電話ボックスを通り過ぎた。
何でこんな山道に電話ボックスが?それも明かりがついて・・と疑問に挟む余地も無く、何故か周囲がザワザワとしてくる。「何、何の気配?」周りの様子が何故か変。
今まで聞こえていた夏の夜特有の虫の声がぴたりと止んだにも関わらず、周囲にザワザワと音がする。道路の左側に何かが動いている物がある。
「何?」と見てみると、50cmぐらいの丸いものが何個も動めいている。黒くて丸くて毛だらけの生き物?今まで見た事も無い奇妙な生き物が、何匹も動めいている。
「何だ?あれ」車を止めて見てみようかと思ったが、本能が車を止めてはいけないと告げている。ふと頭上を見上げると、オレンジ色の丸いものが2つ輝いていた。
「何、標識?」と思った瞬間、そのオレンジ色の丸いものに顔がある事が分かった。オレンジ色の丸い顔が2つ、ゲタゲタ笑いながらこっちを見ている。
「うわっ」と驚いて、そのまま夢中でスピードを出して、気が付いたら日本海の海沿いの道路に着いた。車を夜通し運転して疲労が貯まると、こんなにもはっきりと幻覚を見るもんだと初めて悟った。