ありがちな怪談話なんだけど、父の友人の話してくれた経験が洒落にならない怖さだったその父の友人(仮にAさん)は、夜釣りが好きで、といっても素人なんで某海岸線の道路脇のテトラポットが並べてある場所がお決まりの釣り場所があって、そこは内海になるので、テトラポットの上に立っていても大波は来ないし、すぐ横の道路には電灯が点いていて足元も明るい人家も近くにあって、そこそこ安心感もある・・というような、素人太公望のAさんにはうってつけの場所だったそうだ。
その場所でAさんがいつもの様に釣りをしていて、夜中の11時を過ぎた頃ふっと後ろの電灯に陰がさしたので、釣竿を持ちながら後ろを振り返るとお婆さんが道路を歩いているところだった。(電灯の前を通ったので陰ができた)「何でこんな時間にお婆さんが?」と不思議に思ったけど、そのまま通り過ぎたので、すぐに忘れて釣りに没頭していると、直ぐ後ろに人の気配がして思わず振り返るとそのお婆さんが真後ろに立っていた!「幽霊?!」って一瞬ギョっとしたものの、間近で見ても生きている人間としか見えなかったし、お婆さんも「釣れますかいの?」なんて呑気に聞いてくるので安心して「いや~なかなかですわww」みたいな受け答えをしてから「ほな、お気をつけてと、そのお婆さんが道路に戻っていったのを確認してからまた釣りを始めた。
すると暫らくして、今度はすぐ斜め前方のテトラポットの上に、そのお婆さんが立っているのを目撃して「そんなところにいたら、危ないですよ」と言いかけてふと自分が立っているこの場所まですら、男でしかも滑り止めのついたゴム長を履いて苦労して来たのに、そのお婆さんはスラックスとツッカケみたいな軽装でどうやってあそこまで簡単に行けたんだ?と疑問がわいたし、そのお婆さんを斜め後ろからじっくり見ると、薄明かりの中でも何となく不自然な陰影があるのに気がついたそうだ。後頭部のラインが変というか、ごっそり削げ落ちていて、凹んでいるように見えるので確かめようと目を凝らしていると、そのお婆さんがふと振り向いてAさんの方を見たので、顔が潰れていて目も鼻も口も無くなっているのがはっきり見えて、もうAさんは悲鳴を上げて釣り道具も何もかも放り出して、這うようにこけたり転んだりしながら道路に出て、近くに止めてあった自分の車に飛び乗って家まで帰ってきたけど、手足が傷だらけで震えが止まらなかったとか。
それからは怖くて夜釣りを止めた・・と言っていたが、このAさん普段は嘘どころか冗談もあんまり言わない人だったので、多分実話だと思うけど一旦、安心させておいてフェイントで脅かす幽霊って嫌だ・・・・_| ̄|○