漏れが消房だったころの話なんだが、妙なボロイ借家に住んでいた時期があった。
当時、両親が離婚をしたこともあり、子供とはいえ精神的にアレだった気がしないでもないけどね。急に苗字が変わった事もあり、小学校で軽いイジメのターゲットとなった漏れは、放課後のドッジボールやサッカーに参加するわけにもいかず、1人まっすぐ帰宅するのが習慣になりつつあった。
まぁ鍵っ子ってやつ。いつものごとく借家(2F建て)の鍵を開け、自分の部屋(2F)へ直行した漏れは作りかけのミニ4駆の製作にかかった。
しばらくすると日も沈み、腹も減ったしTVでも見ながら食事をとろうとした時にソレはおきました。トン、トン、トンと階段を駆け上る音がする。
家の中には漏れしかいないのに。その音は普通に階段を駆け上るのとなんら変わらず、ゾっとするのと同時に、もしかしたら働きにでた母親が戻ってきたのかと思わせるくらいに普通でした。
しかし足音は漏れの部屋の前で止まり、硬直して動けない漏れの前でふすまはそっと動いた。…立っていたのは母親ではなく、見知らぬ同年代の女の子。
3秒ぐらいお互いに言葉を交わすでも見詰め合ってたと思う。女の子はくるっと後ろを向くと、階段をトン、トン、トンと降りていった。
怖いと思うよりも、あっけにとられてた漏れは、泥棒なのか何ナノかわからず放心状態だったけど部屋にあったプラスティック製のバットを片手にとりあえず1Fに降りようと思った。階段を何故かそっと足音を忍ばせながら下りる漏れ。
頭の中は混乱してたけど、それなりに色々と可能性を考えていた。1 実は母親はもう戻ってて、知り合いが来ている。
2 実は家賃を滞納してるかなんかで、大人の人が怒りにきた。3 鍵をかけ忘れたから泥棒が入ってる。
と、まぁこんな感じだったと思う。でも1Fに降りて玄関を確認すると鍵は閉まっている。
家の中はシーンとしている。声もしない。
1Fはリビングと台所(繋がってる)、風呂(トイレ)しかないので、いるとすればリビングだろうな…と思った。この辺から何ともイヤな感じがしはじめていたんだけど、それでもそっとリビングを覘いてみると…何とも奇妙な光景がそこにあったんだよ。
日も暮れて暗い部屋の中に、明かりもつけずにテーブルに向かって座っているサラリーマンと女の子。こちらに背を向け台所に立っている女の人。
皆、一言もしゃべらず、微動だにせず、じっと下をうつむいてた。気がついたら漏れは母親に抱き起こされ、しきりに「大丈夫?大丈夫?」と揺すられてた。
どうも廊下でぶっ倒れてたらしいんだよね(苦笑見たことや、おこった事は全て実感として覚えてたけど、親には言えなかった。頭がアレになったと思われる要因が漏れの環境には揃いすぎてたし…なにより住む場所がなくなるかもってのがイヤだった。
あの家でかつて何があったのかなんてコレっぽっちも知らないけど、当時母子家庭の母親が1人で借りられる2F建ての借家なんて…まぁ何かあった家だったのかも。