ピアノ弾きだった音大の友人に聞いた話。
友人が練習のために大学の練習部屋にきたんだけど、割り当てられた時間より少し早くきてしまって、ドアの細いガラスの窓の隙間から覗いたら練習してた人がいたらしくて、外で待ってたんだって。しばらく楽譜をさらってたらしいんだけど、バツン、バツン、て音が気になって集中出来なくて、友人は五月蝿いなーって思ったらしい。
最初は打楽器の音かと思ったらしいけど、そのあたりはピアノ科の練習部屋しかないはずだしって不思議に思った。よく耳をすませてみると、自分が入る予定のその練習部屋から聞こえてくるって気づいた。
でも、おかしいんだよ。だって防音のはずで、音が漏れてるにしては、はっきりと音が聞こえる。
友人は、不振に思って部屋を覗き込んだ。練習していたはずの人は、ピアノから手を外して、何かやっている。
よく目をこらしたら、ペンチで指のまたをちぎってた、らしい。音だけが不自然に近くで聞こえたとか。
バツン、バツン、バツン、て。友人は、幽霊っていうか、生霊だったんじゃないかって言っていた。
「まあ気持ちはわかるよ」平気そうに言うその友人が一番オカルトだと思った。