学生時代のマジ話。
当時車にハマっていて、毎晩峠を走って遊んでいた。その日の夜も三人で峠に行ってたんだけど、山道で友達の一人が脇道を見つけた。
友1「…こんなとこに道あったけ?」この峠はよく来るので、知らない道はない。初めは工事か何かで重機が入った跡だろ…という話になったんだけど、冒険心もあって、その脇道を進んでいくことになった。
林に囲まれた獣道を、揺られながら1、2k。道が悪く、いよいよ車では進めなくなってきた所で、池があり行き止まりになった。
俺達は車を降りて、池に近づいていった…。池はあまり大きくない楕円形で、深さは2mくらい。
周囲から中央に向かって板を並べた平らな橋がある。水は結構透き通っていて、水草が沢山生えているのがわかった。
ライトに照らされた池は、なんとも綺麗だったのを覚えている。橋の上で20分ほどだべった後、そろそろ行くか?ーみたいな話をしてた時。
ーボチャァンン!友1が足を滑らせて池に落ちたのだ。初め驚いたけど、水面から顔を出す友1を見ると笑ってしまって…。
みんなで笑った。いい思い出だ。
そう思っていた。ところがひとしきり笑って、いざ友1をよく見ると、何故か苦しそうにもがいていた。
それは明らかに溺れてる様子で、俺達が「どうした!?」と聞くと、友1「足に何か絡んでる!なんかに引っ張られてるみたい!」ーと、いうのだ。友1の急なSOSに、最初俺達も冗談だろと薄笑いしてたんだけど、どうもマジみたいだった。
取りあえず引っ張ったが、なかなか引き上げれない。俺は何が絡んでるんだろ(水草か?)と、不思議に思って池の中を見てーー俺は引きつった。
池の中に誰かいた。そいつはどこを見るともなく水中を漂っていた。
死体だった。俺は泣きそうになって友2を見た。
友2も同じものを目撃したのだろう、真っ青な顔してた。逃げ出したい気持ちを抑えて、全力で友1を引っ張り上げると、友1の両足に絡むように青白い腕が…。
友1を橋へ上げると俺と友2は逃げ出した。友1がその場でゲホゲホしながら、「なしたのよー?」と言ってくるので、「お前もいいから来い!走れや!」と、怒鳴って車に乗り込んだ。
そして狭い道を無理矢理ターンして、一目散に入り口の国道まで逃げたのだー。その後、俺は無言で車を走らせ、友2はつぶやくように「何なのよ…」と連呼していた。
友1はただならぬ雰囲気に、口をつぐんでいるようだった。峠を抜け、街の明かりが見えてくる。
落ち着いたところで友1が恐る恐る口を開いた。友1「どうしたんだ?お前ら…?」俺は友2と顔を見合わせてから、ゆっくりとこう言った。
「…お前の足に女がしがみついてた…多分死んでたと思う。ただお前の足を、もの凄い力でずっと掴んでた…」