お袋から聞いた話なんだが、お袋は昔、写真屋で働いていたらしい。
といっても、現像などの仕事ではなく、現像ミスや、二重写しになった写真について説明する係、まあ、いわゆる苦情処理のような物を担当していたらしい。当然、そんな職業をしていると、いろいろな写真に出会うことが多くなるわけで、年に数回ぐらいは、心霊写真のような物が客によって持ち込まれていたらしい。
もっとも、そのほとんどが二重写しや感光などが原因だったそうだが。さて、そんなお袋が出会った写真達の中で、どうしても原因が分からなかったものが二枚あったらしい。
そのうちの一枚、お袋が一番最初に出会った心霊写真らしき物はいつものように客の手によって持ち込まれたらしい。その日、お袋がいつものように仕事をしていると、若い女性が店に入ってきて、写真に変な物が写っていると言ったそうだ。
お袋は、またかと思いつつも、おそらく二重写しの類だろうと思いながら、差し出された写真を受け取った。その写真には客の女性と、恋人とおぼしき男性が手をつないで写っていたそうだ。
そして男のジャンパーの懐から、真っ白な手が、まるでおいでおいでをするような形で覗いていたそうだ。それを見てお袋は相当混乱したらしい。
男性の手も女性の手もちゃんと写っていて、周りに人がいる様子もない。二重写しにしては、はっきり写りすぎている・・・結局お袋は、わかりませんと言って、客に写真を返したらしい。
お袋が出会った二枚目の写真、それは自分で撮った写真、それも俺を撮った写真だったらしい。ある日、お袋は幼い俺を撮った写真を整理していたそうだ。
そして、整理もそろそろ終わろうかという頃に一枚の写真に目が止まったらしい。その写真には玄関先で無邪気に遊んでいる、俺の姿が写っていたらしいが、その俺の後に同じくらいの背格好の影が、重なっていたらしい。
最初、お袋は俺の影かと思ったそうだが、その影とは別に、ちゃんとした俺の影が足下から伸びていたそうだ。その上、その影には角のような物が生えており、角度的な関係で、まるで俺から角が生えているように見えたそうだ。
俺はそこまで聞いて、体をぶるっと震わせながら聞いた。「その写真、どうしたの?」するとお袋は、「あまりにも気味が悪かったから、破いて捨てた。
」結論、一番怖いのはお袋だ。