かれこれ15年は経とうかと言うのに、いまだ忘れる事が出来ない顔がある。
私は中学の時、押し入れで寝ていた。中は当然広くも無く、体育座りをしてようやく体が入る程度の高さしかなかったが小さい机と電気スタンド、漫画本や玩具を並べ、狭いながらもお気に入りの部屋だった。
その頃の自分は無類の怖いもの好きで、肝試しや怖い話などはしょっちゅう、付き合わされた友人には気の毒な事をしたと今になって思う。しかしそれでいて、極度の怖がりだと言うのだから全くもって手に負えない。
その為、寝るときは電気スタンドの電気を消さず、狭い部屋を煌々と照らしていた。中学2年生のお盆も中頃を過ぎた真夏の暑い日の深夜、上半身裸、トランクス一枚で布団を掛けて寝ていたが、あまりの寝苦しさに足で布団を下に擦り下ろした。
半分寝ぼけた状態で「ふぅ、これでやっと涼しくなった」とでも思ったのだろうか大きく息を吐き、再び深い眠りに付こうと試みる。・・・何か、オカシイ。
布団を掛けていた時より寝苦しい・・・。ナンダロウ、何だ?寝苦しいというよりも、胸が苦しい。
押し入れは襖(ふすま)のある入り口と、もう片方は壁なのだが壁に背を向けて左半身を下に寝ていた。モチロン、押し入れは一人が横になるのが広さ的にも精一杯。
電気スタンドの明かりが狭い押し入れを照らしている。布団は既に足元まで移動しているので、照らされている自分の胸元を何気なく見た。
左半身を下に向けた自分の両脇から、白く冷たい手、まるで白粉でも塗りたくった様な真っ白く細長い手が「にゅっ」と飛び出し、自分の脇を「ギュ~」、「ギュ~」、「ギュ~」と押しているではないですか。自体が全く飲み込めず「なんだこれ~」と眺めていました。
両脇の手は背中の方から伸びています。多分短い時間、5秒程度だと思いますが非常に長く感じられました。
「キリキリキリキリ・・・」本当にそんな音が聞こえ、その音に合わせて自分の首が真後ろに捻じ曲げられます。肩、手、足は全く動かなく、首だけが。
そこには、真っ白く綺麗なロングの女性が押入れの壁に半分埋まった状態でいました。女性が口元を緩め「ニィ」と笑った瞬間、フッと意識が飛び気絶してしまったようです。
次の日の昼過ぎに目が覚めました。「ん・・・疲れた。
体がダルイ。なんか、怖い夢だったな~」ふと、自分の両脇を見ると締め付けられたような手形がくっきりと胸に残っていました。
自分の体験談はいくつかありますが、その中でも一番怖かったのがこの出来事です。以来、壁を背にして寝る事が出来なくなりました。
いま、思い出しながら書いているのですが、やはり手が震えてタイプミス頻出。後日談等一切無く、消化不良気味かもしれませんが、これで終わります。