「こっくりさんしない?」最初に言い出したのはたしか、好奇心旺盛な怖いもの知らずのJだった。
皆酒が入っていた為、口々に同意する。私たち4人全員が集まるのは、久しぶりだった。
中学を卒業して、初めての夏休み。各々、進学したり、就職したりと新生活に振り回されつつも、連絡は欠かさなかった。
「最初、どうやるんだ?」「ああ、それなら…」黒一点のRが尋ねる。それに対して私は「いいサイトがある」と、本格的なこっくりさんのやり方が載っているサイトを開いた。
「まず、半紙を用意」「半紙?」「習字紙。習字かばんの中に入ってる」私の指示に従って、3人が用意を進める。
文字を書く墨には、自分たちの唾液を混ぜて、供える酒を準備。「お酒?酎ハイでいいかな?」「泡盛とかは?」「あ、それいいわ!」本当はお酒は清めなくちゃいけないらしいが、それは無視した。
「なんか鳥居をね、血で書くといいらしいよ」カルトマニアのKが言う。Kは所謂、みえる人だ。
Jが血で鳥居を書いて、準備は終わった。折角だから2時から始めよう。
Kの提案で、15分程待つことになった。「じゃあ行くよ?こっくりさんこっくりさん、いらっしゃいましたらおいでください」Jの言葉を皆で反復する。
「………………」「………何も、起きねぇな」5回程繰り返したが、何かが起こる様子はない。拍子抜けだ。
10円玉からKが手を離し、Rも手を話す。私が手を話して、Jが面白くなさそうに手を離しながら言う。
「何もなんないじゃん。しょぼ」5が文句を言った瞬間、パン、とかわいた音が響いて、10円玉が消えた。
私たちはア然として、辺りを見回す。フローリングの床には、何も落ちていない。
「今、落ちた音、しなかったよな?」「……うん」Rの問いに、頷く。張り詰めた空気のなかKがぽつりと漏らした。
「この部屋、いない方がいい」その声に弾き出される様に、家を出る。電気も消さずに飛び出した私の部屋の窓には、誰もいない筈なのに3人の人影が見えた。
その日は結局、夜が明けるまで待って部屋にRと戻ったんですが、こっくりさんの紙も消えてました。それから1週間くらい、ポルターガイストが続きましたが、Kのお祖父さんにおはらいをしてもらってなんとかおさまりました。
怪我人も出ましたが、Kは最後まで何を読んだか教えてくれません。