高校1年のときのこと。
学校の行事で合宿をすることになり、私の学年は県内の大型キャンプ場に一泊しました。現地に着いて割り振られた部屋に入り、夜のキャンプファイヤーの準備までの時間をめいめいで過ごしていたとき、誰からともなく「お化けの話をしようよ」ということになりました。
部屋は定員8人の大部屋。2段ベッドが4つある、合宿所としてはよくある作りです。
私は窓際のベッドの2階を陣取り、集まってきた同級生たちの話に耳を傾けていました。ふと向かい側のベッドの一段目を見ると、なんとなく違和感を感じました。
そこでは一人が寝そべっていて、もう一人がその前に座っています。寝そべっている子の胸の部分は、座っている子の陰になっていて見えません。
見えないのは、その一部分だけのはずでした。顔は、窓から差し込んでいる西日ではっきりと、それこそ真っ白に浮き上がるほどよく見えていました。
首から胸にかけては、どういう加減か真っ暗で見えません。足元はやはり薄暗く、ぼんやりと輪郭がわかるのみです。
「生首みたい…」ついつい声に出して言ってしまいました。とたんに、ざわめきが止まりました。
一瞬の沈黙の後、悲鳴が上がって、みんなが次々と部屋から飛び出したんです。私は少々面食らいながら、あとに続いて廊下に出ました。
パニックの渦中では泣き出している子もいました。なんとなく悪いことをしたような気がして、「ごめんね」と謝ると、複数の子が首を振ります。
「ううん。私たちもずっとそう思ってたの」後で聞いたのですが、その合宿所のある山には滝があって、よく人が飛び降りるのだそうです。
数年まえには珍しく女性の自殺があったそうで、それから目撃談が相次いでいるとか。滝の下にある大岩に顔面からぶつかっていったという話ですから、そのときも、砕けてしまった頭を見つけたかったのかもしれません。
余談として。キャンプファイヤーの最中に、火の中に、何人もの苦悶の顔を見つけた私は、その夜熱を出しました。
後日現像された写真には、一人の女生徒の後頭部に髪の長い女性の頭蓋骨が映っていました。中部地方にある「県○の森」に行くときにはご用心ください。