これは私が祖母に聞かされた昔話で母が田舎にいた頃に母の祖父(曾祖父?)に聞いたお話です。
母は中国地方にある小さな村で生まれ育ったのですがその村の裏の山には主(土地神)がいて村人は年に数回お供えをしていたそうです。そのお供えには村の男が二人で向かうのですが、山へ入る前に『○○○○(むにゃむにゃ~と母は言ってました)申すか?申さぬか?』『申す!』とおまじない(?)みたいな掛け合いをしていくらしいです。
ちなみに、山の主とは猿の妖怪(老猿?)で目が合うと襲い掛かってくるそうです。(普通の猿でも目が合えば襲い掛かってきそうですがw)万が一山で主に遭遇した時には目を合わせずに『申す!』と言うと退散していくとの言い伝えがあるとのこと。
妖怪は自分の正体がばれると力を失うらしいく、申(猿)を『申す』に変えて呼んでいたのではないかと母は言ってました。(お前は猿だ!って意味なのかな)その村には別の村から嫁にきた女が一人居たのですがある日、その女が行方不明になったそうです。
村中でその女を捜索したところ、山のふもとで見つかりました。女は体中に引っかき傷を負っていて髪の毛は毟り取られ、片目は潰れもう一方の目もえぐられていたらしいです。
村の老人はそれを見て山の主さんと目を合わせてしまい、襲われたんだろうと言いました。村人達は昔から山の恐ろしさを教えられているので迂闊に山に入ったりはしなかったらしいのですがその女は好奇心が勝ってしまったのでしょう。
女はなんとか一命は取り留めたそうですが、よほど怖かったのか意識を取り戻した時、うわ言のように『申す…もうす…』と言っていたそうです。(おまじないは効かなかったのでしょうか?w)恐怖のあまり気が触れたのか、それ以来その女の前で山の主の話をすると狂ったように『申す!申す!』と繰り返すようになってしまったそうです。
ところが村の子供達はそれを面白がり、女の旦那が仕事に出ている間にその女のところへ行き「やまぬしさん!」「やまぬしさん!」と面白がって脅かしていたそうです。その心労に絶えかねたのか、女はついには首を吊って自殺してしまったそうなのですが…村に異変が起き始めたのはそれからしばらくした頃だそうです。
村に女の霊が現れるようになったそうで、驚いて声を出したり物音を立てたりすると、髪をつかまれ、目玉を潰された後に殺される。静かにしていれば何もしてこないそうなのですが、両目の潰れた女の霊のあまりの恐ろしさに発狂してしまう者も居たそうです。
恐れおののいた村人は山の反対側、村のはずれに社を建て、女の怒りを鎮める為に村人全員の髪の毛と一緒に祀ったということでした。この話を聞いた私は母におまじないを聞こうとしましたが、母の祖父が「このまじないを知ってる奴の所にも女は現れる」「社のある村の中に居れば滅多なことは無いが、女のお前は嫁入りして村をでていくだろうから知らない方が良い」と教えてくれなかったそうです。