ガキの頃、夏休みに連れと自転車で自宅から10㎞程離れた森林にカブト探しに行った。
あらかじめ、クヌギの木にバナナや蜂蜜を塗っておくために、初日は夕方の七時ごろに行った。最初のうちは明るかったが、三十分も経てば暗くなってきたから、適当に作業を澄ませ、山から出ようとした。
連れと「明日、カブト獲れるかなぁ?」とか話ながら下山してると、山頂から凄い勢いで走ってくる足音がした。『ダダダッ、ダダダッ、ダダダッ、』まるで馬のような感じで。
俺と友人はビクついて振り向いたが、何も居ないし、その足音も聞こえなくなった。「今、すげぇー足音しなかった?」っと友人が聞いてきた。
「うん!聞こえたよ」と答えた瞬間、再び足音が、『ダダダダダダダ!』今度はかなり荒々しい音で俺たちに近いところから聞こえてきた。振り向くと、両目をありえない程見開いて、口元から20㎝程の長い舌を垂らした女が、だらしなく伸びた髪を振り乱しながら、俺たちを凝視しながら横走り(蟹走り?)してきていた。
俺たちは恐怖のあまりに声も出せずに一目散に走って逃げた。20m程走って振り向くと、その女は居なかった。
何をされた訳でもないが、それが今までで一番恐い思い出だし、虎馬で山が恐くなった