僕は当時、居酒屋でアルバイトしていました。
建物の造りは、1F駐車場、2F少人数の一般客、3F大人数用個室、という感じです。その居酒屋の3Fには、倉庫になっている一室がありました。
トイレットペーパーや、雨の日に出す傘立てなどがしまってありました。うだるように蒸し暑い土曜の夜でした。
3Fの片づけを1人でやっていました。突然その倉庫になっている部屋の中から、音が聞こえました。
ガンガン、ガンガン!?誰かが中で何かやってるのかな・・・。きっと他のバイトが僕を怖がらせようとしてるんだろうと思い、深く考えずにひょいっとドアを開けました。
部屋の中では首のない体が仰向けで手足をバタつかせていました。それはまるで子供が玩具をねだるような感じでした。
一瞬頭が真っ白になって立ちすくみました。そのとき、ドアの上のほう(部屋の内側)から女の声がしました。
はっきりと。「こっちだよ。
入っておいで。ほら。
見上げてごらん。」僕はつい覗き込みそうになっていましたが、何とか思いとどまりました。
かといって逃げ出すことも出来ず、まわらない頭でどうしようか考えていました。声はなおも聞こえてきます。
「ほら。どうしたの?入りなさい。
ほぅらぁぁ!」内側にはのぼれるようなところはありません。そこにはきっと今暴れている体に付いていた頭があるんだ。
そう思っていると、ドアの上の淵から髪の毛が下がってきました。やばい!降りてくる!僕はそこでやっと逃げ出しました。
まるで水の中を歩くように足取りは重かったですが、なんとか階段を下りました。背後では、「待てえぇぇぇ・・ぇぉぉ・・・・。
」という声がしばらく聞こえていました。