学生の頃の話です。
夏休みのバイトで、内装の軽作業をやることになりました。ある田舎町に新規開店する、スーパーの棚の搬入作業です。
二日間のバイトの予定が、天候や事故などのトラブルで、三日に延びました。オープンまで時間がないということで、最後は徹夜作業でした。
バイトに残ったのは、僕と友人、フリーターらしき男3人。深夜便のトラックを待つ間、作業責任者は僕らに仮眠をとるよう言ってきました。
売り場にダンボールを敷いて、それぞれが寝付いたのは、12時を過ぎた頃でしょうか。僕が悪夢にうなされて目を覚ますと、傍らの友人はうめき声をもらしていました。
どうやら金縛りにあっていたらしいです。僕が友人をゆすって起こすと、彼は小さな悲鳴をあげて生還しました。
「なんか中年のおっさんがのしかかってきた」彼は初めての体験だったらしく、かなり動揺してました。「そいつは○○○○って名前じゃなかったか?」僕は咄嗟にそう尋ねました。
僕が見た悪夢は、その名前の中年男が殺されるものでした。何者かが馬乗りになって、刃物を突き立てているシーンが脳裏に焼きついていました。
「何だよそれ」友人と僕は、今しがた起こった事を、興奮しながら語り合いました。そして、少しはなれて寝ているフリーターを目で探しました。
彼も同じような目にあっているのでは、と思ったからです。バイトの間、彼とは個人的な会話はなかったです。
どうやら失業中で、求職中とのことでした。顔色が悪く、病み上がりのような感じもしました。
その彼は姿が見えません。作業責任者が僕らを呼びにきた時も、彼は現れませんでした。
結局彼は失踪しました。今となっては、あの夜の出来事が何だったのか、想像するしかありません。
○○○○という名前だけが、これからも記憶に残るのは確かみたいですが。