この話は、地元の心霊スポットとして有名なトンネルに行った時の話です。
そこには遠足や、ちょっとした遠出での寄り道として普通によく通っていました。随分前ですが、中学生の頃、遠足でそこを訪れた時、友人3人と並んでそのトンネルを通りました。
中は薄暗いのですが、そんなに距離もないしいつも通っていると言う事と、普通に何人もの人が通っていたので、特別恐くはありませんでした。ところがトンネル内の途中で、一人で歩く4~5歳程度の男の子を見つけました。
親も居ないみたいだし、つい目で追っていました。その子からは嫌な感じはなく・・・寧ろ温かいような懐かしいような感覚がその時したと思います。
ですが、その時は特に気にせず、そのまま出口に向かいました。そろそろ出口付近だと言う所で、今度は白いワンピースを着た髪の長い女性を見かけ、この時はなんとなくですが「あぁ、この人は生きてない」そう思ったんです。
その人は悪寒の塊のような感じがして、体全体が彼女を拒否しているかのようで、ともかく気持ちの悪い人でした。と言っても、顔は見えてません。
ぱっと見は綺麗そうでした。雰囲気が気持ち悪いのです。
そしてその人を通り越した所で、何故か凄く後ろを振り向きたくなりました。背中はゾクゾクと寒気が走っているのに、駄目だと脳が訴えているのに、どうしても後ろが気になるのです。
もう、無理だ・・・そう思い振り向こうとした瞬間、袖を引っ張られるような気がして下を見てみると、トンネルの途中で見た男の子がいました。とても悲しそうな顔をしてこちらを見ています。
何で?と思った瞬間、声が頭に響きました。「見ちゃ駄目だよ、お姉ちゃん。
帰れなくなっちゃうよ」僕みたいに・・・。そう頭に言葉が響き、聞き終えた瞬間涙が流れてきました。
何故かはわからないのですが、トンネルからだいぶ離れるまで涙は止まりませんでした。涙が止まるまで、背中にはずっと悪寒にも似た寒気が走っていましたが、治まるまでその男の子は袖を引いて一緒に歩いていてくれました。
そう言えば、その男の子は友達や、同じ学校の人達には見えていなかったみたいです。同じ班の友達が心配してくれていたのですが、その時の私は泣くばかりで何も言えませんでした。
寒気が通り過ぎた後、男の子も消えてしまったのですが、私はあのトンネルに帰ったんだな・・・そう思いました。その後は無事に遠足を終え、バスで帰りました。
帰りのバスの中で、霊感があると言っていた友達が・・・(私の前の席に座っていたのですが)「あの子が助けてくれたんだ、良かったね」と急に声をかけ言ってきて、さらに。「あの子も一緒に帰らせてあげたかったね、きっともう随分と前からあそこにいるんだよ。
○○(私の名前)みたいな子を、ずっと前から助けてあげているんだろね」「・・・・・・誰から?」私はなんとなく分かっていましたが、聞いた。「あの般若のような顔をした女からだよ・・・連れて行きたかったみたいだよ、あんたの事」「・・・えっ・・・!?」その言葉を聞いて、私は口を開けて暫し放心状態になっていました。
霊感の強い彼女にはしっかりと見えていたらしいです。般若のような恐ろしい形相の女が、物欲しそうに私を見つめながら、後を追いかけていた姿を・・・暫くしたら諦めたようで、トンネルに帰っていったそうです。
きっと男の子が消えた時の事だと思います。あの男の子が何者何かは分かりません、調べる気もありません。
ですが、その日以来そのトンネルを通っても、男の子もあの女も見ることが出来ませんでした。あの女には出会いたくないですが、男の子だけには、どうしても会いたかったです。
会ってお礼が言いたかった。その時以外、私には霊的出会いは何もありません。
でももう一度だけ・・・もう一度だけで良いので、あの子に会いたいです・・・。