高校時代に僕がオカルトで師と仰いでいた人がいた。
僕はその人の事をドーモさんと呼んでいた。ドーモさんは高校が自宅から近い癖に何故か一人暮らしをしてて、当時はよく遊びに行ってた。
一人暮らしってもマンションとかじゃなく、ぼろい一軒家(しかも物置に使われてたらしくがらくたで溢れかえってる)。親の持ち物だから家賃の心配はないわけです。
当時はかなりうらやましかった。高三になったばかりの頃だったと思う。
春の肌寒い夜、僕はドーモさん家で酒(生意気にも)を飲んでいた。その日ドーモさんは、部屋の整理をしながら僕と飲んでたんだけど、いきなり「あ!なつかしいもん見っけ!」と叫んだ。
僕が興味津々に見ると、なんて事はないただの絵本だった。おもしろい物が見れると期待した僕はがっかりして、また酒を飲んでた。
ドーモさんは整理の手をとめ絵本を読んでいる。しばらく携帯をいじりながら一人酒を飲んでいると、なにやらドーモさんの様子がおかしい。
ページを開いたまま固まっている。僕は『?』な感じで、様子を見ていると、ドーモさんは「…そうだった。
」と呟いて、ページをめくっていき絵本を読み終えた。整理をやめたらしく僕の前に座り酒を飲みはじめた。
僕が「そうだったって何が?」と聞くと、「映像が記憶をひっぱってきやがった」と呟いた。ドーモさんは少し顔色が悪いみたいだった。
僕がその意味を聞こうとすると、ドーモさんは自分が子供だった時の事を語りだした。当時、この家が物置だった頃(今もほぼ物置だが)、ドーモさんはよく遊びに来ていたらしい。
秘密基地みたいな感じかな?お菓子や絵本などを持ってきて、一人の時間を堪能してたらしい(子供の癖にw)。その絵本を読んでる時に、幽霊を見たって。
そして約束を交わしたらしい。なんでも当時ガキだったドーモさんは幽霊に対する耐性がなく、ガクブルで一度見てすぐ、下を向きっぱなしだったらしい。
(つまり、読んでいた絵本のページをずっと見てた)その幽霊はドーモさんを連れていこうとしてたらしく、ドーモさんは「嫌だ」とくびを横にふっていたけど、あまりにしつこいので「大人じゃないから知らない人についていけない。」って叫んだらしい。
(全然ガクブルってないようなw)それから幽霊は消えたらしいんだけど、最後に「じゃあ大人になったら連れていく、約束。」って言ったらしい。
むかし話を終えたドーモさんは酒を煽った。僕は「は?何それ?何で今まで忘れてたん?」と当然の質問をした。
ドーモさんは「小2の頃に自力で忘れた。」と平然と言った。
自力で忘れる?不可能じゃね?僕がそんな事を思ってると、「あれ?ちょっと待ってこれ、あの時記憶と一緒に捨てたはず……2冊あった?待てよ…」とドーモさんがキョロキョロまわりを伺いだした。この時点でついていけなくなった僕は帰る支度をし、最後に質問した。
「約束…どうするん?」ドーモさんは満面の笑みで答えた。「約束は破るタメにあるのだよワトソン君。
」僕はそうこなくっちゃ!と良い気分(微酔いだったし)で家に帰った。でも高校を卒業してから、ドーモさんは居なくなった。
家族でさえも行方は知らないらしい。