1974年7月15日。
アメリカのフロリダ州、ABC放送系列のサラソタ局では「サンコースト・ダイジェスト」というニュース番組が生放送されていた。画面はちょうど29歳の女性レポーターである、クリスティーヌ・チュバックがしゃべっている場面であった。
放送の途中、クリスティーヌは「ただいまから流血事件をカラー映像でお送りいたします。」といったかと思うと、そばにあった机の引出しをあけ、中から38口径のビストルを取り出した。
そして他の人があっと思う間もなく、そのままピストルを自分の頭につきつけ、引き金を引いたのだ。「バーン!」と、銃声が響き渡る。
突然画面が消え、しばらくして映画番組に切り替わった。この時のテレビ局側の対応が、やらせではなく、本物の自殺であることを物語っていた。
後に分かったことだが、この放送中の自殺の前、彼女は知り合いに遺書を託していた。その遺書の中には自分の自殺劇のニュースの原稿も書かれていたのだ。
「クリスティーヌ・チュバック記者は15日の朝、ニュース番組を生放送中に、その番組の中でビストル自殺を図りました。クリスティーヌ記者は、すぐにサラソタ記念病院に運ばれましたが、意識不明の重態です。
」実際は重態ではなく、14時間後に死亡した。