一、この話は創作ニ、振り返ることは許されない三、最後まで見る事雨の日、やることもなく男はパソコンをいじっていた。
仮に男をAとしよう。Aは引きこもりをしている。
容姿はいたって肥満だ。そんなAもついにやることがなくなってしまった。
はたしてとりえも才能もないAは恐い話を検索した。Aはオカルトには興味は無い男だった。
そんなAだからこそ心霊現象など信じはしない人の一人だった。検索すると何千とヒットする。
Aは検索数の高い話を次々と見ていった。何時間とブラウンカンと睨めっこをし、ついには厭き始めてきたA。
そんなAはある一つの話を目にする。どこにでもありそうな掲示板の一つの書き込み。
そこにはどこにでもありそうな恐い話しが書いてあるだけだった。しかし、一つだけどの話とも違うのは一番下に「一、この話は創作ニ、振り返ることは許されない三、最後まで見る事」と書いてあることだった。
それを見た瞬間Aは寒気を感じた。窓の外では雨が酷く降り続けている。
視界の端では女が笑う。Aはもう一度書き込みを見た。
「一、この話は創作ニ、振り返ることは許されない三、最後まで見る事」Aは突然振り返りたくなった。この書き込みの意味する物は何だろうか。
妙な好奇心のせいか身体が震えてくる。雨は今も尚降り続ける。
Aは振り返った。何も無い。
いつもの自室だ。視界の隅では女が哂う。
パソコンをもう一度見る。すると、書き込み欄に異変が起きていた。
「一、この話は現実ニ、過ちを知る事三、最後まで観る事」視界の隅で雨が降っている。女は恐怖に顔を歪ませる。
幾度と無く刺し幾度と無く切る。Aは理解した。
この話は、俺自身の話だ。Aはパソコンの電源を切った。
布団に駆け寄る。記憶が何かを探ろうとしている。
思い出すのに怯えている自分がいる。ふいに布団から顔を出した。
視界には女が哂っている。雨の日、男は女を殺していた。
男の名はAだ。忘れようとしていたのに。
Aは目の前にあの日の画面が蘇る。掲示板に書かれていたあの話は、一体誰が書いたんだ。
Aは最後の文を思い出した。「三、最後まで観る事」今、Aの前にはあの日の女が居る。
違うのは、体中に刺し傷や切り傷があることだ。高らかに女は哂う。
視界の隅で雨が降っている。一、この話は現実ニ、過ちを知る事三、最後まで観る事