この前、実家に帰った時の話。
久しぶりに帰ってきたら俺の部屋は荷物置き場に。しょうがないから居間で寝た。
その夜の事。オレンジの豆タマつけて寝てたら、居間の横の台所から白い物が見えた。
居間と台所の間には古い家で良く見る、曇りガラスの格子戸がある。その時は暖房が効きすぎていた為に、30cmほど開けて寝ていたのだ。
その格子戸の向こうから白い影がゆらゆらと近づいてくる。両親は別の部屋で寝ている為、台所には誰もいるはずがない。
俺は寝ぼけたのかと思って台所とは逆方向に寝転がって寝ようとした。ガッシャーン!格子戸のガラスが揺れる音がした。
割れたのかと思ったくらいに何かがぶつかった音。ガッシャ!ガシャ!ガシャン!何かが居間に入ってこようとして、格子戸の30cmのスキマから無理やりにズリ出てこようとしているような音。
肩が曇りガラスにぶつかって、何度も激しい音がする。俺は不思議と夢うつつでその音を聞いていた。
格子戸すら普通に開けられない非力さと、ガラスを鳴らす激しさのアンバランスが現実感を感じさせなかったからだ。俺はそのまま寝付いた。
朝早く目を覚ました俺は、まだ誰も起きてない事を知ると、居間の格子戸を開けて台所を調べた。誰もいない。
台所から居間を見て、俺は鳥肌がたった。寝ていた畳に激しい引っかき傷が残っていたのだ。
あの夜、肩を戸にぶつけながら居間に入ってこようとした白いヤツは、寝ている俺の背中に向かって腕を伸ばしたのだろうか。もし、もう少し台所に近い位置で眠っていたなら、と考えて俺は・・・・・。
うちの家は旧家で歴史もあるが自殺者や変死者の話は聞いた事もない。しかし通りがかりの幽霊にしては凶悪すぎたと思う。
まぁ今では酒の席でのネタしかならんが。