アルバイト仲間6人で仕事が終わった後ドライブがてら比較的近くにある心霊スポットへ肝試しに行こうということになった。
俺が運転し、K田が助手席に座り、I下、O野、N谷は後部座席に座った。M上はバイクで俺達の車の後ろからついてくることに。
真っ暗な山道をうねうね登っていき、もうすぐ問題のトンネルだ・・・という時、後部座席に座る女三人が、すさまじい絶叫を上げながら暴れだした。驚いた俺とK田は車を急停車。
後を振り向き、そしてその光景に目をむいた。真っ白いロウソクのような手が二本、床から生え、真中に座っていたO野の両足首をしっかり掴んでいる。
I下とN谷は悲鳴を上げながらO野の足からその手をはずそうと必死になって蹴飛ばしていた。しかし手は離れない。
それどころか二本の手の間からじわじわと、人の頭が浮いてきた。俺もK田もあごがはずれるほど大きく口を開けあらんかぎりの叫び声をあげて意気地なく車から逃げ出した。
その叫び声でパニックに陥っていたN谷も我に返り車から飛び出した。しかしまだI下だけは逃げずにO野にからみつく白い手と格闘していた。
なぜなら足首を捕まれているO野とは一番の親友だったからだ。恐怖にひきつった目を向け「私を置いてかないで!一人にしないで!!」と叫びしがみつく親友を置いていくわけにはいかなかったのだ。
必死の形相で、足首をつかむ手を蹴飛ばし親友を助けようとひっぱり続けるI下。しかし、彼女の精神にも限界がある。
それをだれが非難できるだろう。まるで水面から人の顔がゆっくり浮かんでくるように・・・出てきた女の顔がI下をにらみつけた。
その瞬間、命の危険を感じたそうだ。気がつくと親友を置き去りにしてI下は車から逃げ出していた。
明かりひとつ無い暗い山の一本道。車内のルームライトとテールランプがぼぅっと辺りを照らし出し、闇の中に車が浮いているように見えた。
取り残されたO野の悲鳴はまだ続いていた。車から逃げ出した俺達は、彼女を見捨てた自責の念と不安と恐怖で遠くに離れることもできず、車からほんの数メートルのところで彼女の悲鳴を聞きながら抱き合って泣き震えていた。
車から目が離せなかった。O野の後頭部が見える。
子供が「いやいや」をするように、頭を大きく左右に振りそしてシートに倒れたのだろうか・・・彼女の頭がシートの陰に沈んでいった。そして、彼女の叫ぶ声も、彼女が暴れて揺らしていた車の揺れも消えた。
俺達は彼女を助けるべく、おそるおそる車に近づき車内をのぞいた。しかし、そこに彼女の姿はなかった。
結局、それ以来誰もO野を見た奴はいないんでそれからO野がどうなったか知ってる奴はいない。ただ、それが原因かどうかわからないけど、I下は俺たちを避けるようになって、今では、居場所もわからなくなった。
K田とN谷とは今でも時々会っているが、この話をすることはないね。俺たちの間ではなんとなくタブーになってしまった。
これが、俺が今まで生きてきた中で最高に怖かった体験です。