洒落にならない怖い話を集めました。怖い話が好きな人も嫌いな人も洒落怖を読んで恐怖の夜を過ごしましょう!

  • 【洒落怖】二段ベットの秘密

    2023/01/09 18:00

  • ある日、警衛(駐屯地の警備)勤務についていました。

    その時の編成は自分の所属する中隊ではなく、各中隊からの混成でした。あっという間に昼のシフトが終わり、夜間のシフトに移行しました。

    深夜十二時頃を過ぎると、さすがに駐屯地中が静けさに包まれました。勤務も単調になったとき、ある中隊の若い隊員(山井:仮名)が口を開きました。

    「俺、今度の満期で辞めるんですよ」この言葉から始まった会話は、深夜にもかかわらず、結構盛り上がりました。何とはなしに彼が入隊した時の事に、話は及びました。

    そこで、「とんでもない目に遭った!」というのです。彼は入隊後の教育終了と同時に、北海道のある部隊に配属されました。

    着隊して部屋に案内され、自分のベットを示されたとき、アレ?と思ったそうです。それは、シングルベッドが、ずらりと並ぶ中で自分のベッドだけ二段ベッドなのです。

    しかも、下が空いているにもかかわらず、上の段で寝るように言われたそうです。その時は、「ああ、たぶん教育か何かで、長期不在の人がいるんだろうな」くらいにしか思わず、さして気にも留めなかったそうです。

    しばらく経つと、職場の雰囲気にも慣れてきたので、自分の下の段に寝ている人の事を訊ねてみました。すると、奇妙な事に誰のベッドでも無い、と言うのです。

    「じゃあ、下で寝かせて下さいよ」と、彼が申し出ると「いいから上で寝ろ」の一点張り。イジメにしては何だか様子がおかしいとは思いながらも、仕方なく上で寝たそうです。

    そんなある日の夜の事でした。夜中に彼は息苦しさで目を覚ましたそうです。

    すると、ベッドのすぐ脇に誰かが立っていたそうです。しかし、消灯後とはいえ薄明るい室内にもかかわらず、その人物は黒い塊のようで一切、顔が見えなかったそうです。

    「なんだ?」と思っているのも束の間、その影がいきなり首をしめてきて、彼にこう言うのです。「やまいぃ~、やまいぃ~、俺の頼みを聞いてくれぇ~」と。

    首を絞められて、苦しさにもがく彼は(なにが聞いてくれじゃ。こんな事しやがって)と声にならない叫びをあげたそうです。

    すると、その黒い影は前にも増して迫ってきたそうです。さすがの彼も、これはたまらんと思ったらしく声に出して「イヤじゃ。

    誰がきくか!」と叫んだそうです。すると、その影は寂しそうに消えていったそうです。

    次の日、これはただ事ではないと同じ部屋の者に問いただしてみましたが、一切、口をつぐんで喋りません。すると、見兼ねた同じ中隊の違う部屋の先輩が、事の真相を教えてくれたそうです。

    実は、彼が着隊する半年ほど前に、失恋を苦にして青函連絡船から身を投げた者がいて、その人が使っていたベッドが、まさに、この二段ベッドの下だったとの事でした。最初はシングルだったのだが、あまりに怪奇現象が起こるのでやむなく、二段にしたとの事でした。

    しゃれにならんほど怖かったそうです。