車で一泊二日の家族旅行に出かけて、帰ってきたのは夜の10時ごろ・・・後30分ぐらいで家に着く、そんな時の話です。
私の家の近くは田んぼや畑がまだ多く、遠くまで見渡せるようになっていて、昼間の線路近くは電車と景色とのコントラストがなんとも良い感じの場所でした。車の中には母、兄、姉、そして私が旅行の疲れで半分、眠っていて、運転手の父だけが家路を急いでいました。
ちょうど線路近くに差し掛かったときに、私たちの乗る車は踏み切りで引っかかり、貨物列車が通るまでの少し長い時間を父はサイドブレーキを引いて待っていました。まだ列車のライトが遠くにいて、父はタバコを吸い始うために窓を開けたそうです。
その時、父は「なにしてんだ・・・?」とつぶやきました。父の声によって、家族全員でちょうど列車が来る方と反対側の線路に人影を見ました。
助手席に居た心配性な性格の母はいち早く異常に気が付き「自殺!?」と叫びました。「んなことはない」と後部座席にいた私たち三人は、気にしない態度を取っていましたがしかし、母があまりにも騒ぐので、そっちを見てみると、確かに線路上に人影が見えたんです。
「やばいかな?」と思っているうちに轟音を立てて貨物列車が通りすぎていきました。結局、窓が開いていて、列車はブレーキ音も立ててないし、轢かれたような音もしていない。
気のせいだ・・・と楽天的な私たちは、そう結論付けて帰宅しました。家には小さな庭があって、居間のレースのかかった大きな窓から庭の様子が覗えるようになっています。
場所は少し離れますが、日の光があれば、さっきの線路も家から見えます。旅行から帰って、しばらく居間で私たち家族はTVを見てなごんでいました。
すると庭でかすかに音がするんです。(猫かなんかか・・・?)TVを見ていたのでそんなに気をとられなかったんですがチラっと家族の顔を見るとTVとは違う方向に視線を集中させています。
レースのカーテンの奥には白い大きな人影が歩いていました。しかも、その白い人影は上半身と思われる体を前後に大きくふっています。
首から上がなくてバランスが悪く、足を左右にふんばりながら歩いているのでした。恐怖に対して、体中の毛が逆立ち、手が震えていました。
自然と家族は寄り添うような感じで集まり、庭を通り過ぎて、視界から消えるまでの時間を過ごしました。後日、近所の人に聞いたんですが、私たちが旅行に行っている間にあの踏み切り近くで自殺があったことが分かりました。
その人は線路で横たわって列車に首をはねられ即死したそうです。現在では居間の大きな窓には厚手のカーテンをかけて、外が見えないようになっています。