犬を連れて家に向かって歩いていました。
ちなみにこのときの状態としては、別に酔っ払ってなどいませんし、少し疲れてはいましたが、意識ははっきりしていました。もう少しで家へ真っ直ぐ続く道に入るというところで、何かが聞こえてきました。
エコーの入った声で、スピーカーか何かを通して発しているような声でした。でも何を言っているかは全然聞き取れませんでした。
その声がはっきりと大きく聞こえるようになった瞬間に私は壊された家の前に居ました。2,3日程前から工事が始まったとても古い家です。
その時間はもう工事は終わっていて、ロープが張られたまま人などいない状態で放置されていました。中には草木がぼうぼう生え、全く手入れなどされていない様子でした。
誰が住んでいたかは全く知りません。人が住んでいたのかということもわかりません。
その家を通った直後に、今まで聞き取れなかった声がはっきりと聞こえてきたのです。あ、あ、、あ、あ、う、お、、、あ、あ、い、あ、、あ、い・・・とても低い男の声色で、一文字一文字を短く発する不気味な声・・・。
気味が悪すぎて思わず立ち尽くしてしまいました。一定のリズムでは無く、不規則でした。
とても苦しみを帯びているような感じがしました。聞こえた途端に寒気がしたので、早歩きでその場を立ち去ろうとして、その家の前から離れた途端、つまり隣の家の前に足を踏み入れた途端に、その声は止んだのです。
その声の主がスピーカー等を使って私のことを驚かしていたのなら、離れるにつれて声は小さく聞こえ続けるはずです。でもピタッと止んだのです。
そして、いつもは堂々としている犬がキョロキョロしだし、落ち着かなくなりました。とりあえず犬を抱いて家に走って帰ったのですが、その後10分程に3度無言電話がありました。
無言電話はそんなに珍しい事ではありませんが、この出来事の後です。恐くて仕方がありませんでした。
あとでわかった話。その家にはおじいさんがひとりで住んでいて、2年前に先立たれた奥さんの後を追うように同じ病気で死んでしまったそうです。
主の居なくなった家を息子夫婦がその土地を売ることに決めたようです。その病気というのが、詳しくは知りませんが肺や喉の辺りの病気で、大変苦しみながら死んでいく病気なのだそうです。
もしかしてあの声は。