洒落にならない怖い話を集めました。怖い話が好きな人も嫌いな人も洒落怖を読んで恐怖の夜を過ごしましょう!

  • 【洒落怖】台風の夜

    2024/01/04 09:00

  • 一人暮らしを始めたばかりの頃、俺の住む県に台風が直撃した。

    その夜は眠りをさまたげるほど、風がびょおお、と音を立てて吹き荒れ、俺は眠れずにいた。そんな時だ。

    突如玄関のチャイムが、ピンポン、と鳴った。こんな夜中に誰が?と思いつつ、俺は覗きレンズを覗き込んだ。

    人がいる。ぎょっとしたが、声をかけた。

    「どなたですか」「おう、○○、俺だよ」「あれっ!?何だよお前、連絡もなしに」その声は俺の友達の声だった。だが、外が暗いのと、帽子を深々とかぶっているので、顔がよく見えない。

    そんなことはどうでもいい、相手が友達だったという安心感に、「それにしてもお前、この嵐の中よく来たなあ」と言いながら鍵を開けはじめた。だが、俺はそこで気が付いた。

    <一体どうやって、この嵐の中を徒歩で来たのだ?>彼には運転免許がない。バスで来たとしても、バス停からここまで、少し歩かなければならない。

    それに、こんな風の吹き荒れる夜に遊びに来るやつはまずいない。一体何の用が?俺はまた覗きレンズを覗いた。

    「お前どうやって、ここに来たんだ?」すると彼は、数秒の沈黙の後、顔面を思いっきり覗きレンズに近付けてきた。顔がロウ人形の様に白く、目だけがリモコン操作されたようにギョロギョロとしていた。

    それは俺の知っている彼ではなかった、いや、それどころか、それは人ではなかった。そしてそれは、口をこれでもかとばかりに横にひろげ、にいぃっ、と笑った。

    俺は腰が抜け、その場に座り込んでしまった。我にかえると、急いでその友達に電話をした。

    当然ながら、彼は来ていないと答えた。その夜はますます眠れなくなってしまった。