10年近く昔の体験。
仲間内で肝試しの計画を立てた。
K県の峠にある、
もともと精神病院だったらしい廃墟。
集まったのは俺を含む
男4人女4人の計8人。
車を走らせる事約1時間、
みんなワイワイはしゃいでたが
その建物が見えた瞬間女性陣が完全に沈黙。
男の方も俺を含めてかなりビビってた。
それほどの、
これこそまさに廃墟といった風貌だったんだ。
到着するも女性陣は絶対に入りたくないと完全拒否。
俺達も、情けない事に
どうしようどうしようと相談していた。
「せっかく来たんだから男だけでも入ろうぜ?」
と俺が切り出す。
女の子が見ている手前、
精一杯の見栄を張ってたわけだ。
全員の目がKYと俺を睨む。
俺は誰か異議を唱える事を、
誰よりも心から望んだ。
・・・が、悲しいかな異議は無く、
後に引けない状況になった。
男3人は俺をさぞ恨んだろう。
俺も自分を呪った。
かくして懐中電灯の明かりを頼りに入り口を探す。
見つけたくはなかったが
あっさり窓ガラスの割れた裏口らしき物を発見。
俺達は男4人で押し付け合うように入って行った。
建物は全5階建て、
1階には受け付けや診察室らしき広い部屋。
2~5階は病室らしき部屋が
各階に約20ずつでかなり立派なものだった。
最初はビビりまくっていた俺達だったが、
次第に恐怖感も薄れ
前の奴の肩を叩いてみたり、
呻き声を上げてみたりして戯れ合いながら廃墟を徘徊した。
終盤に挿しかかり
4階から5階に登る階段を上がっている途中だった。
後ろから
「カツーン・・・カツーン・・・」
という足音らしきものが聞こえ
しんがりを勤めていた俺はふいっと後ろを振り向いた。
当然誰もいない。
他の男3人には聞こえてないようだった。
大きな建物だから
俺達の足音が反響しているんだろうと勝手に納得した。
階段を登り終えると
2~4階と同じように20ほどの部屋が連なる通路に出た。
不意に窓から外を見ると、
女性陣4人の姿が月明かりに照らされて見えた。
俺達が建物に入るときは女性陣はみんな車に乗ってたんだけど、
さすがに退屈になったのか俺達に向かって
手を振ったり指差したりしている。
何か叫んでたみたいだけど、
5階じゃよく聞き取れない。
俺は英雄気取りに女性陣に手を振り返した。
探索も終わり
意気揚々と俺達4人は廃墟を後にし、
俺達4人は車に戻った。
しかし、女性陣の姿が見当たらない。
車にも乗っていない。
俺達は真っ青になってすぐさま車のライトを点け、
周りを見渡し女の子4人を探した。
丁度車のライトに照らされる場所に
女の子は4人とも身を寄せ合うようにうずくまっていた。
俺はホッとして女の子達に駆け寄ったが
悲鳴を上げられた。
顔をあわせようともしない。
俺達に怯えているようで俺達はオロオロと
「どうしたの!?」
「何かあったの?」
「さっきまで手を振ってたじゃない」
女の子4人は泣くばかりでこちらに見向きもせず、
取り合ってくれない。
とにかく俺達は嫌がる女の子を抱きかかえ、
車に押し込めた。
ようやく落ち着いたのか、
女の子の一人がボソッと言った。
「あのとき・・・5階に居たとき・・・あんた達5人だったよ・・・」