ウチの会社の派遣社員のGさんから聞いた話。
以前務めていた会社で残業で帰りが深夜近くになった。タクシーで住んでるマンション近くに着いたのが大体夜中の1時前くらい。
ちょうど季節は5月半ば。人気の無いマンションを心地よい夜風が吹いていた。
Gさんは欠伸して上を向いた。真っ暗な背の高い建物の輪郭と夜空が見えた。
と、突然、首がさらに上を向こうとする。急に後ろで縛ってある髪が重くなったのだ。
Gさん実はこのとき髪がかなり長かった。腰くらいまであった。
それが下に引かれる感覚がした。今思うと、その感覚は誰かが後ろで髪を掴んで引っ張っている、というよりも何かが髪にしがみついている、といった感じのものだったそうな。
うそーん、誰? 痴漢? でも私以外誰もこの歩道にいなかったしなぁ。そんなことを考えながらGさん、重さを感じた瞬間、慌てて後ろを振り返った。
背後には誰もいなかった。しかしGさん、このとき変なものを見てしまい、ついでに変なものにも触れてしまった。
Gさんの視界の隅っこに何か「赤ん坊の手」みたいなものが映って、消えた。・・・何、今の?その次の瞬間、ぶにゃっとした感触。
Gさんは右方向に振り返ったわけだが、その勢いによって、髪が身体の左方向に振り子のように揺れた。そのため、「髪の先に掴まっていたもの」の一部が見え、その後、左腰と荷物を持ってた左腕にそれがぶつかったらしかった。
うわ。とGさんは思った。
ぶつかったものは妙に柔らかかった。重さはその直後に消えていたが、さすがにゾッとしたGさん、今度は慌てて左後ろを振り返った。
歩道脇にある植込みの中を何かがざざざざざざと走る音がした。それが何かは周囲が真っ暗だったし、Gさん自身も目が悪いためわからなかったが、大きさ的には猫くらいの大きさの、青っぽい色の生き物?だったそうな。
怖くなったGさんは駆け足で自分の部屋へ帰って、速攻で寝た。で、次の日の朝、服のその変なものがぶつかった部分を見てみたら、少量の泥が付着していたらしい。
「多分、猫の見間違い。もしくは新種の妖怪じゃないかな?」今はかなり短いショートカットなっているGさんはその体験をそう結論付けていた。