5年前まで俺は、神奈川県の某高校に通っていた。
通学に時間がかかるので、俺はそこの古い木造の男子寮に住んでいた。寮の廊下を歩いていると、ときおり妙な音がする。
また、夜中に部屋で勉強をしていると、音がする。天井の上で、ズズーッ、ズズーッと、なにか重たいものを引きずるような音がするのだ。
ある日のこと、寮の仲間達は体育祭の練習に出かけていたが、俺は少し身体の具合が悪かったので寮の中にいた。すると、またあのズズーッ、ズズーッという音がする。
普段は気にもとめていなかったが、広い寮の中に一人でいると、妙にこの音が気になる。「よし、何の音か確かめてやろう」俺は懐中電灯を用意すると、部屋の押し入れの天井板をはずし、天井裏へ登った。
這ったまま、音がした方向へ向かう。だが、しばらくいくと、行き止まりになってしまった。
木の格子が、行く手を塞いでいる。なぜ、こんなところに木の格子が?「なぜ?」という疑問は残るが、格子の向うへいけないのなら、これ以上は調べようがない。
しかたなく、俺は格子のすきまから懐中電灯をさしこみ、向う側を照らしてみた。すると、格子の向こうの、ほこりが積もった天井裏に、何本も帯の様なあとがついている。
何かを引きずったあととしか思えない。ゾクッと背中に悪寒が走り、俺は慌てて自分の部屋へ戻った。
その後、何度かあの音を耳にしたが、二度と天井裏へは入らなかった。