とある駅ビルのカフェレストランで昼食をとっていた時のこと。
食事もほぼ終わり、セットのデザートが出された頃、女性2人と子供2人の4人連れが入店してきた。女性達は主婦仲間なのか、畳んだベビーカーを引いていて、子供は3歳くらいの男の子と、1歳くらいの女の子。
あまり子供が好きじゃない私は、こっちの席に来て欲しくないな・・と思っていた。しかしその願いもむなしく、店員は私の斜め後ろ辺りの壁際の席を案内し、4人はそこへと歩いてきたのだが、その途端、唐突に子供が泣き始めた。
私はそちらに目を向けるのも嫌だったのだが、声から泣いてるのは男の子だと分かった。突然堰を切ったように激しく泣き出し、何かを嫌がっているようだった。
しまいには、「こわい~~~!!」と大声で泣き、母親たちも困惑している様子。私はそれでも無視していたのだが、ついに耐え切れなくなり、その親子連れへ目を向けた。
すると、母親に抱きかかえられた男の子は、案内されるはずだった席の上方を指差して、「やだ、こわい~~~!!」とひどく怯えていた。この店内には洒落た絵画などが飾られていたから、きっと変な絵でもあったんだろうと、指差す方に目を向けると、そこにはただ、真っ白な壁があるだけだった。
しかし男の子は、母親が一歩でもそこへ近付こうとすると、より一層激しく抵抗する。背筋に何か冷たいものが走った。
店内の客もみな唖然としている。店員も困惑していたが、母親が「すみません。
何かよく分からないんですけど、他の席にしてもらってもいいですか?」と伝えると、あっさり別の席へと案内した。あの席から離れると、すぐに男の子は泣き止んだ。
彼には一体、何が見えていたんだろうか…。残された客の間には、嫌な空気が漂っていた。