私が中学生の頃弟が祖父のところで花札を覚えてきて家族の中で流行ったことがありました。土曜の夜、明日は休み~ということで夜中まで花札をしていました。
父が突然「ラーメンが食べたいなぁ」と言い出したので車で20分程度の夜中までやっているラーメン屋さんに行くことになりました。お腹いっぱい食べて帰り道、弟が早く帰って花札したいとゴネだしたので山道を通って早道することになりました。
狭い道路の両側にたくさん木が生えていて、暗いし私はあまり好きな道ではありませんでした。その道を走っていると工場があるのですがその工場の前を通ったとき母が「停めて!」と言いました。
家族は文句ブーブーだったんですが、父がちょっと離れたところに車を停めました。「ねぇ、工場の前の草むらに女の人がいたよ。
こんな夜中で車も滅多に通らない道だし、何かあったのかも知れないし、とりあえず戻ってみない?」母の言葉に私たちは半信半疑でしたが、結局狭い道を必死にUターンして戻ってみました。「ここ!この辺!」と言うので停まって探してみたのですが見当たりません。
いないじゃーんとみんなで母を批難していたらおかしいなーといった感じで「あそこにいるじゃない。ガードレールの後ろ・・・ほら、髪が長くて白いワンピース着てるでしょ?ノースリーブの・・・」そこまで言いかけた母は何かに驚いたように黙ってしまいました。
その時季節は冬。お正月すぎたばかりの1月半ばでした。
「なんで・・・今の季節にノースリーブなんて、おかしいよね?おかしいよね?」母は必死に私たちに話しかけますが私たちには見えないのでこちらも困惑するばかりです。どうしたら良いやら困っていると「出して!早く車出して!!早くっ!!!」物凄い形相で母が叫びました。
その声にびっくりして私と弟は頭を抱えて下を向いてしまいました。父は車を急発進。
「やだっ、追いかけてくる!早く!もっとスピード出して!!」何がなんだかわからない父も必死にぐんぐんスピードを出して車を走らせました。その間にも母は「早く!早く!!!」と凄い勢いで叫んでいました。
途中は叫ぶ・・・というか泣き叫んでました。家に着いた頃には全員冷や汗びっしょりでした。
とにかく見えなくても怖くて怖くて・・・。何より父の言葉が怖かったんです。
「あのさ、ガードの後ろって言ったよな?でもあそこのガードの裏はすぐに崖みたいになってて人なんて立てないんだぞ?工場が何年も前にあそこを削ってその砂でデコボコだった駐車場を整備したんだよ。」その場が凍りつくのがわかりました。
あれから私も免許を取って車に乗るようになりましたが、あの道だけは通っていません。父も母も避けているようです。
工場のつくりがちょっとわかりにくいと思うのですが、母が女の人を見た、というガード側は崖の下が資材トラックの駐車場になっていて、工場自体はかなり遠くに建っています。