夏ぐらいに千葉にあるクラブに行った帰り。
始発電車に乗る為少しだけ先にクラブを出て、駅まで歩いていた。空は夜明けの薄明かりで車も人もいなかった。
クラブ帰りなのか、10メートルくらい離れた所に女の子が一人でヨタヨタ歩いていた。もう千鳥足っつうか、カトチャンぐらいに揺れていた。
俺は後ろから一定の距離を保って歩いていたんだけど、その女は靴を片方しか履いて無かったみたいでミュールの『カツカツ』とゆう音を出していた。多分酒飲んで踊ってを繰り返してそのまま出て来ちゃったんだなぁ…とか思いながら駅に着くと女は急に走り出してどっかに消えてしまった。
さっきまであんな歩き方だったのに大丈夫かなぁ?とか思って俺も階段を走って行った。ホームに着くと人は2~3人ぐらいしかおらず、あの女はいなかった。
『うわ…幽霊かよ…』ちょっとワクワクした俺は友達に『幽霊みたいな女見たぜ!!』みたいな電話をし、笑い話をまじえながら電車が来るのを待った。少しして電車が来たので友達との電話を切り真ん中ぐらいの車両に乗った。
その時息が止るのと同時にビックリして声が『うっ』と出た。さっきの女が乗っていた。
今来たばかりの電車に既に乗っていた。やはり靴も片方のみでイスにだらしなく座り下を向いて手すりの方に寄り掛かっている。
怖くなり体が動かなかったが必死にホームに戻ろうとした。しかし丁度の所で扉はしまった。
本当に本当に怖かった。次の駅で降りて次の電車を待とうと思い、幽霊か生きている人間か分からないその女の少し離れた所に座って震える手でさっきの友達にメールを打っていた。
友達から『どんな顔なのか』とメールで聞かれるが下を向いていて髪がたれて見えないし、ましてや怖くてまともに見れない。メールじゃなく電話で友達と話して怖さをまぎらわそうとした瞬間。
『ゴンッ』電車の窓に頭をぶつけた女が目を見開きこっちを見ている。顔は上を向いて目は俺を見ている。
口は半開きだった。距離は5メートルぐらい離れていたが車両には誰もいないので俺を見ているのは分かった。
すると女は口をパクパクした。アナウンサーが早口言葉を練習するように口を動かしている。
その間も俺と女は目があったままだ。良く見る口の端からタラリと血のような物が垂れている。
俺は『間違い無い、死んでるんだこいつは…』と思っていると女はどんどん血を吐きだし口から下、顎までが真っ赤に染まり鼻からも血を流していた。息が上がりゼェゼェ言い、涙を流して俺はごめんなさいと心で唱えた。
『○○に到着です、○○線はお乗換えです』アナウンスが流れ、俺は外に飛び出した。すぐに振り返り車内を見ると女はまだこっちを睨んでた。
電車は走り出した。俺は片手に違和感を感じ見てみると左手に靴を持っていた。
『プシュー』閉まった車両の窓に女が鬼の様な顔でへばりつき魚の様に口をパクパクさせていた。俺はその場でへたりこんだ。
しばらくしてこんな話を聞いた。『電車の中で変な女に会ったら目を見てはいけない、見た奴は必ずまた女に出会う』つまり憑かれるって事らしい。