高校時代の友人『A』から聞いた話だ。
彼が中学3年生のころの事。それは進学塾からの帰宅途中に起きた。
自転車を漕ぎながらふと時計を見ると、針は九時半を回っていた。「まずいなあ。
十時からみたいテレビがあるし…。近道するか…。
」しかたなく彼は、普段は足場の暗さから避けている小学校脇の農道へ向かった。暗い農道を走り続けると、急にひらけた所へと出た。
やがて、遠くに小学校の校舎が見えてくる。「あれ?」校舎の壁の小さな窓に誰かがいる。
彼の自転車を漕ぐ速さが増し、段々と小学校へと近付いてゆく。それは、ひとりの少女であった。
窓から腰まで身を乗出しこちらの方をジッと見ている。「こんな時間に何やってんだろう。
何年の娘かな。」根っからのひょうきん者の彼は、自転車を止め少女に向かって、大声で叫びながら、ありったけのギャグをかました。
しかし、少女は無表情のまま一言も喋らず、ただ虚ろな目で彼をじっと見つめているだけであった。「変な娘…。
」あきらめて、自転車のペダルを漕ぎ始めたその瞬間!彼は気が付いた。「変だ!あの壁に窓なんかある筈無い!彼女の胴体も不自然に長すぎるし、だいいち腰から下がねじれている…。
」彼は悲鳴を上げ、泣きながら家へと走った。そして、テレビは見なかった。
翌日、新聞で昨日あの小学校で自殺した少女がいた事を知った。