俺が中学校の頃。
その頃しょっちゅう同じ夢を見てまして。左右田んぼの田舎なすっげー長い道をひとりで歩いてるんですよ。
すると、向こうから和服の女の人が小さな男の子の手をひいて歩いてくる。んで、その人とすれ違って少し歩くと目が覚める。
まあ不気味っつーよりも意味不明な夢で、当然女の人にも男の子にも見覚えなんかないんですけどね。んで、その夢の話を友達にしたのね。
こんな夢見るんだ-と。そしたら、そいつが「俺も同じ夢を見る」ってーの。
意味不明度急上昇っすよ。なんで?なんで同じ夢?そいつとは中学に入ってからの知り合いだし、魂の兄弟とでもいうわけ?まあそんで、そいつが「次に同じ夢を見たら俺、女の人に話しかけてみる」っていうのね。
面白そうだから俺も「やってみやってみ」なんて気楽に言ってたんだけどさ。そしたらその夜、丁度その夢をみたのよ。
あー、あいつ女の人に声かけるんだなー、なんて思いながら、俺、いつもどおり女の人とすれ違ったのね。そしたらいつも無言で通り過ぎるのに、そのときに限って、女の人が「やっと見つけた」って呟いたの。
その瞬間に、背中がぞわっとしたね。「あ、やばい、なんか知らんけどやっちまった!」って思った。
んで目が覚めて、もー友達のことが心配で、でもそいつの家の電話番号も知らんし、すげードキドキしながら学校いったら、まあ、よくある話で……失踪しちゃってました。聞いた話、なんか夜中にばたばた家を出て行ったらしい。
もちろん家出ってことでうやむやになったんだけど、それから5年して、ひょこりそいつが家に帰ってきたんですよ。なんか、女の人と男の子と田舎の一軒家で面白おかしく遊んで暮らしてたらしいです。
んで、ふと気がついたら、家の近くの公園にいたって。まあ神隠しってやつなんでしょうが。
とりあえずそいつは今も元気で、きちんと働いてます。空白の5年間は謎のままですが。
ちなみに、俺はそいつが疾走してからあの夢は見なくなりました。女の人と男の子が誰なのかも分からずじまいです。