母の友人の話。
母の友人が昔、病気で入院した。病名は子宮ガン。
さいわい、大したことはなく、手術をすれば治る物だったそうで、彼女は街で、一番大きな病院に入院することになった。さて、彼女が入院して最初の夜、彼女は部屋の中に人の気配を感じたそうだ。
彼女の部屋は個室だったので、看護士が見回りに来たのかなと思ったのだが、その気配は全然出ていく様子がない。不審に思って目を開けてみると、そこには着物を着た男が一人、立っていたそうだ。
いや、男という表現は正しくないかも知れない。それというのも、その人物の顔だけがまるで霞がかかったかのように、あるいは、まるでそこに何もないかのように見えなかったというのだ。
彼女はあまりの恐怖に気を失い、気が付いたのは翌朝だったそうだ。最初のうちは夢だと思っていたそうだが、その男は毎晩現れ、ついには昼間にも姿を見せるようになった。
しかし彼女は、自分が病気や死に対する恐怖のために幻覚を見るようになったのだと、家族や友人にも何も言えず、ただひたすらに耐えていたそうだ。しかし、我慢にも限界が訪れる。
彼女は思いきって看護士にうち明けることにした。すると、その看護士は・・・・・・「見えていたんですか!」と言って、彼女を別の部屋に移したそうだ。