車に乗っていて霊柩車とすれ違ったときは親指を隠せ、ってよく言いますよね。
それは死んだ人の魂が親指の爪の隙間を通って体の中に入っちゃうからだそうです。そんな話に関する怖い体験をお話しします。
Yという友人がいました。彼女とは家が近かったこともあり、小さい頃からよく二人で 遊んでいました。
この話はそのYの事なのですが・・・・Yには小さい頃、変な癖がありました。車で救急車とすれ違うと親指を隠すのです。
「ねえ、それって救急車やのうて霊柩車ちゃうん?」私が訊ねるとYはこんな風に言いました。「なんで?霊柩車乗ってる人はもう死んでしもうてるけど、救急車乗ってる人は 痛いよ、苦しいよって、ここから逃げたいって思うもんなんやない?」Yの言葉に私は「ふうん。
」と思っただけでした。もう10年以上も前のことです。
私自身、Yとそんな話をしたなんてすっかり忘れていたのですが・・・・いたそしてその10数年後、私は短大を卒業しデザイン関係の事務所に就職。忙しくも充実した日々、と言うやつでYとも中学卒業以来会っていませんでした。
あれはちょうど今と同じくらいの時期、バレンタインも近づいた冬の日だったと思います。学生時代から借りていたアパートは泉北にあり、職場へは車で通っていました。
あれに襲われたのは出勤途中のこと。近くで事故があったらしく対向車線からサイレンを鳴らして救急車が走ってきました。
ええ。そんなことはよくあることですよね?私も特に気にも止めませんでした。
そしてすれ違ったまさにその瞬間、だったと思います。聞こえたのです。
「助けて。」と。
私は辺りを見回しました。でも、誰も乗っているわけありません。
しかし声はまるで私の中から聞こえてくるようにだんだん大きくなっていきます。「痛い・・・助けて・・・お願い・・・」と。
私はそのときなぜか、上のYの言葉を思い出したのです。私は車を車道の脇に止め、じっと目をつぶって両手の親指を握り締めました。
しばらくすると誰かが車の窓を叩きました。「誰!?」目を開けると、、、いたいいた「おい、あんた大丈夫かね?」心配そうなおじさんの声が返ってきました。
私が突然車を停車させたのに驚いて後ろの車の方が見に来てくださったのです。気がつくと声は聞こえなくなっていました。
気づくと額にびっしょり汗をかいていました。そのときは「疲れてるんだ」と自分を納得させ、おじさんに謝って事務所に向かいました。
事故そのものはそれほど大きな物ではなかったらしく、ニュースや新聞で取り上げられることもなく私も事故のことを少しずつ忘れていきました。あのことを聞いたのはそれからしばらくして中学時代の友人と仕事の関係で会うことになった時のことです。
・・・勘のいい皆さんならもうお気づきでしょう?あのとき事故にあったのはYだったのです。そして友人の話では頭を打って出血がひどかったYは救急車で病院に運ばれたとか・・・私にはあのとき助けを求めた声の主がYだった気がしてなりません。
いたいいたいたすけて