その建物は4階建てだった。
決して古い建物では無い。築4年程度のものだ。
そこで何らかの事件があったという話しは聞いたことが無かった…。これは友人Aが体験した話だ。
Aはあるアパートの最上階に引越しをした。部屋からの見晴らしは良く家賃も安かったため、Aはとても満足していた。
A曰く、住み心地はいいらしい。ただ、時々ではあるが耳を澄まさないと聞こえないような「コンッ」という小さな音が部屋のどこかからするらしい。
その話を聞いたときは「何か居たりして!」とか言ってAを茶化してたんだ。それから5日後。
仲間と集まったとき、皆の前でAは信じられないことを口にした。「俺、また引っ越したよ…」皆、えっ!?っと驚いた。
そりゃそうだろう、Aがあのアパートに引っ越してまだ半月もたっていないんだから。理由を尋ねられたAはゆっくりと話し始めた。
木曜日の夜のことなんだけどさ。俺、電話してたんだ2時間くらいかな・・・。
そしたら、何故かあの「コンッ」って音が聞こえたんだよ。いつもは静かにしていないと聞こえない筈なのにさ。
でも、そんなの気にしても仕方が無いからそのまま話し続けたんだ。そしたら・・・・「うるさい!!!」おっさんの怒鳴り声と同時にごつい拳が目の前に向かってきた。
拳は一瞬で消えた。突然の出来事に動けないでいると、窓から何かが飛び出してきたんだ。
それを見た瞬間、逃げることしか考えられなかった。飛び出してきたものな、人の頭だったんだよ。
体があったのか首だけだったのかは分からない。でもな一目見て尋常じゃないことは分かったよ。
土気色の・・本当に真っ青な顔でさ・・・。もうあの部屋で住む気になれない、だから引っ越したんだ・・・。
話し終わったAは、その時の事を思い出したのか震えていた。次の日、興味を示した仲間と、霊感が強いBを連れてその部屋に行ってみた。
部屋に入って窓から外を見たBは「あ~、だからか」と呟いた。「ここ、道になってるんだよ。
あそこから丁度真正面になってるからな、この窓」「あそこ?」それを聞いて皆窓の外を見る。この窓から真正面・・・。
窓から見える少し離れた丘の真ん中。窓と同じ高さにあったのは慰霊碑だった・・・。
部屋と慰霊碑との関係。Aの体験。
窓という奇妙な符合。その場の誰もがゾッとした。
あれから4年。そのアパートの前を通るたびに最上階を見るのが習慣になってしまったが、その部屋に光が灯ったのを見たことは無い。