夏の出来事です。
田舎のおばあちゃんの家に1週間くらい泊まりに行っていました。ある夜少し離れた川原で花火大会があるというのでいとこのお兄ちゃんとその友達に連れていってもらいました。
花火大会は楽しかったのですが、お兄ちゃんの友達の一人に何故か胸を触られたりしたのでとても嫌になってお兄ちゃんに理由を言わず「先に帰るね」とひとりで家に帰る事にしました。おばあちゃんの家に行くには田んぼに囲まれた道をずっと歩くのですが街灯はぽつりぽつりとしかなく、家もまばらにしか建っていないのでとても暗いのです。
心細かったので少し早足で歩いていると、前方の道の脇に人影が見えました。ゆらゆらと明かりらしき物も見えます。
わたしはおじいちゃんがお兄ちゃんに電話で知らされて心配して迎えに来てくれたのだと思い「おじいちゃーーん?」と手を振りながら声をかけました。すると人影は「おーう」だか「おーい」だか声を出したので、やっぱりおじいちゃんだと嬉しくなってかけよりました。
でも、ちょっと走って違和感を覚えました。ちっとも距離が近くならない。
「おじいちゃん?」また声をかけてみました。「おー」何か変・・・。
自然に足が止まりました。あっちに行っちゃいけないという思いが頭をよぎります。
でも怖くて体が動かなくなっちゃいました。しかも目をそらせなくて格好悪い後ずさりになってしまいました。
すると今度はあちらから「おーー」と声がしました。こうなってくるともう逃げなくちゃ殺されるとしか思えなくて後ろ向きでその人影を睨みながら走り出すタイミングをはかってました。
動かないと。走らないと。
逃げないと。ずっと頭の中で考えていると急にひときわ大きな声で「おおおおおおおお」と人影が叫びこちらへ向かってきました。
その瞬間体がふっと軽くなったので踵を返して走って逃げ出しました。助けておじいちゃん!おばあちゃん!そんな事を叫びながら走った気がします。
ところが急に目の前に現れた壁のような物にドン!と当たって衝撃で倒れそうになりました。ああもうだめだ・・・捕まっちゃう。
するとその壁は両手をわたしに伸ばし、わたしを抱きとめてくれました。そこからの記憶は飛んでいて気がついたらわたしは道端に座り込んでいて、まわりにはおじいちゃんや近所のおばさんがいて心配そうに声をかけてくれていました。
家に入り先程の事をおじいちゃんに話しましたが最後にわたしを抱きとめてくれた人は居ないそうです。わたしが道端に座っているのを花火大会から戻ってきた近所のおばさんが見つけてあわてておじいちゃんを呼びにいったそうなので。
今思い出しても凄く怖いです。未だに暗い道はひとりで歩く事ができません。