僕は都内の安アパートに住んでいます。
でも、時々息抜きというか、ちょっとした旅行気分を味わうために近くのシティホテルに泊まります。今回お話しするのは、池袋のホテルに泊まったときに起こった身の毛もよだつ体験です。
僕は、駅前の大きな本屋で小説を買い、そのホテルに入りました。シャワーを浴びて、ベットに横になって本を読み始めたときです。
ふと部屋の中の何かが気になりました。それはカーテンです。
何の変哲もない、クリーム色のカーテンでした。自分でもどうして気になったのか分かりません。
再び本に目を落としました。・・・集中できません。
どうしてもそのカーテンが気になります。直視するとピクリとも動きませんが、視界の隅にあると揺れているような気もします。
もちろん窓は閉まっています。2,3時間ほど本を読むともなしにページをめくっていましたが、もう寝てしまおう、そう思い電気を消して目を閉じました。
うつらうつらしだした頃、またふっとカーテンが気になり目を開けました。すると、クリーム色のはずのカーテンに赤いシミが付いてるように見えました。
外のネオンに照らされて赤く見えたのかとも思いましたが、まるで、血かトマトジュースをこぼしてるように、どんどん赤い面積は増えていきます駄目だ、こんな部屋にいつまでもいられない。僕は飛び起きてドアのほうに走ろうとしました。
その瞬間、なにかに滑って転倒しました。血です。
床一面、ベッドにも衣服にも血がベットリと付いています。赤い部屋とはこの部屋のことでしょうか。
悲鳴を飲み込み、這うようにしてドアにたどり着くと、後ろを振り返りました。そこには、血まみれで頭から脳みそを垂れ流している男性が私を睨みつけていました。
なんとかフロントまでたどり着くと、滅多に怒らない僕は声を荒げました。
「おい!どーなってるあの部屋!」
フロント係はキョトンとしています。
「一面血だらけで脳みそが!男が・・・!俺の服にも!服にも・・・え?」
服は綺麗なままです。さっきまで血のりでベットリだったはずなのに。
「お客様。夢でも見られたのでは?」
フロント係は無表情のままです。
「とにかく一緒に来てください!変なんですよあの部屋!」
そう言って、フロント係の腕を掴んで部屋に連れて行こうとしたそのとき、彼は急にガタガタ震えだして、こう言いました。
「あ、あの部屋だけは、勘弁してください・・。」